魔導少女の憂鬱
@cow4
第1話春うらら
神社のでかい木の下で「フゥ~」ため息をつきながら 舞い落ちる桜の花びらを手で掴む 俺は大神青龍 十七歳の高校生だ 青春真っ盛りの楽しい日々を送ってるはずなのに 春のこの良い日和の中 最悪の気分だ
欲しかったゲームの抽選には外れるし お気に入りのチャリはパクられるし 他校の生徒と喧嘩した事で停学になるし 大体あれは あいつらの方から吹っ掛けてきたのに 負けたからって学校にチクるなよな
おかげで 親父の地獄の特訓フルコースで 身体はボロボロだ
(何か いい事ないかね?)そんな事を考ていると 瞼が重くなってきた
夢と現実の合間ぐらいで 誰かが話しかけてきた
「青龍君 青龍君」
「ん? どなたですか?」目を開けることが出来ず 声も出せない なんだ?
「私はこの星を預かってる いうところの神だ」頭の中に声が響く
「か 神様? 神様が俺に何の御用ですか?」訳も分からずテンパってしまう
「君に頼みがあってね」
「俺…… 私に出来る事なら聞きますが?」
「君に他の星に行って冒険をして欲しいんだよ」
「冒険ですか? しかも他の星?」
「行ってる間 ここの世界の時間を止めとくから 帰って来たら 今の状態のままだ」
「何故 私なんですか?」
「ふふふ それは帰ってきた時に分かるよ」
「分かりました ここに帰れるなら 行きます」
「おお ありがとう では行く前に」
「剣の加護を」「武闘家の加護を」「魔法の加護を」 「「「授けます」」」神様とは違う女性達の声が聞こえ俺の身体に何かがインストールされた感じがした
「では 頼んだよ」神様の声が遠くから聞こえた気がした
目が覚めると 祭壇みたいなものの上に裸で寝ていた
薄暗い部屋の中を見渡すと この祭壇の他には何もなく燭台がいくつかあるだけだ
どうしようか? そんな事を考えていると入口の方から音がする
扉が開くと頭の上に狐の耳を付けた少女が手に持っていたお盆を落とし 目を丸くして俺を見ている そうか 俺 裸だもんな ビックリするよな
「使徒様?」少女が言うが 使徒様ってなんだ?
起き上がろうとするが 身体がいつもより重いし 呼吸がきつい この感覚は覚えがある 昔 親父にキャンプに行くと言われ 夏でも雪が残ってる空気の薄い山に連れ出された時のものだ という事はここは高い山なのか?それともこの星自体がこうなのか?冒険とかの前に俺の身体自体を適応させなきゃヤバいな
「使徒様 降りてきて下さったのですね ありがとうございます」
狐耳の女の子に言われた事の意味が分からず 「使徒様?」思わず聞き返す
[巫女様を守り 魔人を封印してくれる賢人を助ける神様の使徒ではないのですか?]
さっぱり意味が分からない俺は
「いや 神様にこの世界を冒険するよう言われただけだが それよりも ここは山の上なのか?」
「ええ ここは神山の頂上になります 平地に比べたら少し高い場所になります」
そうか それでもこの体の重さは異常だな
「君 名前は?」狐耳の少女に聞くと
「これは 失礼いたしました 私は狐族のマミと言います 使徒様のご降臨を見守る家系の娘です よろしくお願いいたします」
「ああ こちらこそよろしくお願いします」
マミが落とした供え物を見ていると腹が減ってるのに気づいた
それを察したのか「新しいのをお持ちします」と言って出て行った
暫くしてマミは供え物を持って来てくれた 後ろに女性を連れて
俺はガツガツと供え物を食い 合間に後ろの女性の事を聞く
「この方は 使徒様の従者です 使徒様が降臨されたら封印を解くようにっ我が家に口伝で伝わっていまして 封印を解こうとしたら 既にお目覚めでした」
「初めまして 主様 ユカリと申します私は人では無く魔導生命体です 主様のお世話をするように作られています」
ユカリは白小袖に緋袴をはいて 千早を羽織っている これに前天冠を頭に乗せれば完全に祭事の巫女衣装だ 右手には薙刀を持っている
「そ そうなんですか?」意味が分からず口に出すと
「左様でございます」言うや千早を脱ぎ捨て緋袴も脱ごうとする
「な 何をしているんですか?」目を逸らしながら聞くと
「陽も暮れてまいりましたし 夜伽の準備を」
「いやいや それはいらないです それよりもこの世界の事を教えて下さい それとマミ 何か着る物はないかな?」 少女と若い女性の前で裸は恥ずかしいし 俺も若い男だからユカリの言葉でますます見られたくない
「その祭壇の下に使徒様の道具ははいっておりますよ」
「そうなんだ ありがとう」そう言って祭壇の天蓋を開けると服と大きな剣が入っていた
服は道着というか作務衣みたいな感じのものだ 草鞋を履いて剣を手に取ってみる
見た目よりも軽い 構えて一振りするが 手に馴染んでいる ただ体は重いままだ
扉を開けて外の様子を観てみる 桜が咲いている 日本に似てるのかな?
散歩がてら辺りを歩いてみる やはり体が重い気がする
明日からはこの環境に慣らすために 体を動かそう
翌日から 近場を歩いてみる 少し歩くだけで体が重く息が上がった
剣を持って素振りをしても 五分ももたないでへたり込んでしまった
ユカリが来て水をくれた 「ありがとう」言うのがやっとだった
次の日も同じことを繰り返し 徐々に体を慣らしていく
「マミ 悪いが明日から肉を多めにしてくれないか?」
「承知いたしました」マミが恭しくお辞儀をする
息切れもしなくなった頃から 散歩をジョギングに変え 素振りと体術の型をj繰り返して行う
一月もした頃からジョギングを全力疾走に変えユカリを相手に摸擬戦をして勘を取り戻す
春が終わるぐらいには地球にいた頃より動けるようになっていた
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