第58話 悪役令嬢と襲撃イベント その二

「とりあえず骸は私に任せて!他はローズに任せるから!」

「うん!わかった!」

「よし……守るよ、ローズ」

「うん。絶対守ろう、リリー」


私とリリーは勢いよくベランダからグラウンドへと飛び降りる。いや、こうしてみるとえげつないな……見た限りでもざっと三千体くらいはいる……って考えると骸、ゴブリン、スライムで各千体ずつか。二千体はかなりめんどいけど……魔法が通じるならいける!


「……多分、こいつらを倒したところですぐに次が来るよね……あぁもうめんどくさい!はぁっ!」

「恐らくそう……多分、狙いは私達に竜への対策をさせない事だと思う。あの武術大会は中継されていたし、誰が黒幕かは知らないけど私達の事は警戒してくるはずだから」


いや、今までも確かにルートから大きく逸れてたけど……これはまた今までのとは格段に違う!三体の竜に不思議な魔笛……もしそれが私達への足止めだとするならばこの襲撃は……人為的なもので間違いないだろう。にしてもどうして?


「ちっ、考えててもしょうがない!とりあえず今は攻撃を続けるしか!」


私は魔法を撃ち続け、ゴブリンとスライムを倒し続けている。……が、まだ三百体……いや、六百体程度しか倒せていない。本当に数が多いな、もう!


「……っ!ローズ!骸がローズの方に向かっていってる!」

「え、嘘!?流石に私一人で全員相手は無理があるって!」

「一旦交代しよう、ローズは骸をお願い!残った千五百体は私がやる!」

「おっけー!助かるよ!」

「……私に応えて、神秘の剣!」


急に骸が狙いを私に変えてきた。リリーが数を減らして今は大体四百体くらいといえど、スライム達にプラスして相手するのは厳しいのでリリーと役割をチェンジする。そしてリリーは神秘の剣を天に掲げて、剣魔法を使う。


「あれ、骸より全然楽かも!でもローズが半分くらいやってくれたのもあるのかな」

「私もリリーが減らしてくれたおかげで多少は楽になってる!」


骸は決まって速力強化をしてただ一発殴ればいいだけだから楽っちゃ楽だ。リリーはと言うと、目に見えないようなスピードで他の魔族たちをあっという間に切り裂いていき、残りはざっと三百体までになっていた。……やっぱりリリー強すぎるって。ほんとにリリーが味方でよかった。敵だったら私はとっくに死んでたって……


「よし、骸残り百五十体!」

「さすがローズ、早いね~」

「リリーもでしょ!残り三百体だし」

「今は骸、ゴブリン、スライム、それぞれ百五十体か……よしローズ、勝負しよっ!」

「え、いいの?私が百五十なのに対してそっちは三百だよ?」

「大丈夫大丈夫、三百体程度すぐに終わるから」

「じゃあ……いいよ、やろっか」


私は更に速力強化を大きくして、突風の様なスピードで骸を倒し回っていく。リリーも負けじと速力を大きく強化して斬って回っていく。よし、残り五体!五体くらいなら二秒もあれば行ける!


「よし、これで骸おしまい!」

「これで……おしまいだよっ!」

「えっとこれは……引き分けかな」

「そうだね。さ、後は……」

「魔笛を鳴らした主犯を叩くだけ、だね。……そこにいるのはわかってるよ。出てきたら?」

「流石ですね、この私がこうも簡単に気づかれてしまうとは……」


私がそう言って木を指さすと、木陰から白い仮面をつけた男が出てきた。こいつ、誰!?……まずい、何もわからない!ゲームにはこんな奴出てこなかった!


「お初にお目にかかりますね。来訪者様。私は魔界より参りました、メサーク・シェロツと申します」

「来訪者……なんの事?」

「お二人はとっくにご存知なのでしょう?自分達がこことは違う世界から来たことを」

「そうだ……それより目的は?襲撃をしかけた目的」

「お二人にご挨拶をしたかったのですよ。でもただ挨拶しただけではすぐ返り討ちにあうだけでしょう。ですから少々派手にご挨拶をさせてもらいました。さて……当初の目的は成されましたし、私は退散しますかね。あとは……"彼ら"に相手をしてもらいましょう」

「っ、待て!」


リリーがメサーク目掛けて斬り掛かる。が、メサークはまるで風化したかのように塵となって消えた。そして次の瞬間……


「ヴァァァァァァァァ!!!!」


三体の竜が、私達の前に現れた。


「来たか……よし、やるよ。リリー」

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