悪役令嬢17歳(悪夢の始まり)

第55話 悪役令嬢と後輩

あの初詣からあっという間に三ヶ月が経過し、今は四月。私達は二年生になった。そしてまた変わらず授業を受けてたある日の事。


「ごめん!ちょっとまたお腹痛くなっちゃったから待ってて!」

「わかりました!お気をつけて!」


と言ってマイに送り出してもらい、私はまたトイレに走ってく。


「さ、早くみんなのところに行かないと……」

「待て……お前、ローズ・コフィールで間違いないな?」

「え?うん、私がローズだけど……」


そしてすぐに済ませて帰ろうとしたら……その途中に一人の少年が立ってた。……そういえばこんな奴もいたなぁ。にしても何忘れてんだろ私。なんだかんだで四人目の攻略対象なのに。……ちょっと苦手だったからかな?


「オレはレイス・ビーズ。一週間前に新しく人を探しに入学してきた」

「えっと……そうなんだ。それで、レイス君、私に何か用かな」

「オレが探していたのはお前だ、ローズ・コフィール。オレは、お前に会いたくてここに入った」

「へ?……私?」


レイス・ビーズ。紫色のマッシュヘアに黄色の目をした、少し背の低い少年。そして本作の四人目の攻略対象。レイスはかなり俺様系で自信過剰な所もあって、個人的に私が苦手としていたキャラクター。確か紗蘭は好きって言ってたな。本来だとリリーとたまたまばったり会ってそこからリリーに一目惚れしてくはず。


「あぁそうだ。去年の武術大会、見たぞ。お前の戦闘の一部始終を。それでオレは、お前と本気で戦いたくなった」

「つまり、私と戦いたくて入学してきたの?」

「あぁそうだ。光栄に思え。オレと戦える奴なんてそうそういないんだからな」

「戦う……うん。いいよ、やったげる。罰ゲーム付きで、ね」

「罰ゲームだと?」

「君さ、かなり礼儀がなってないと思うの。まず、初対面の人にお前とか言ったりしちゃダメだし。だから……私が勝ったら私の事を『先輩』って敬ってみよっか」

「あぁ、それくらいなら全然いいぜ。んで、俺が勝ったら?」

「それはそうだね、君が決めていいよ」


いや、みんなをみんな紗蘭と比べたらいけないのはわかってるんだよ?うん、わかってるの。ただ……なぁんかもの凄いムカッと来るんだよねぇ。


「……とは言ったものの今日はこのオレもかなり疲れていて本気が出せない。だからお前に猶予をやる。明日だ。明日の放課後、オレと戦え」

「明日の放課後ね?わかった。二度とその舐めた口が聞けないように私がコテンパンにしてあげるよ」


絶っっ対負けない。ここで負けたらずっとこの後輩に舐められることになる。そう、だからだよ。私俺様系ほんっと苦手なんだよ!だからもうちゃっとコテンパンに~って行きたいんだけど。レイスってかなりめんどくさい魔法使ってくるんだよねぇ


「もう遅いよローズ!って……あれ?その子は?」

「その制服は…後輩にあたる人でしょうか」

「一度どこかで見たような気がしますわね……?」


そこに私を心配してきてか、リリー、マイ、イリアが走ってきた。すると、レイスはニヤリと笑った。


「……なぁローズ。オレはお前の手札を知っている。それじゃ公平にならねぇだろ?だからオレも手札を見せてやる。光栄に思い、とくとその目に焼きつけるんだな。……お前ら、リリーにイリアにマイだろ」

「え、なんで私の名前知ってるの!?」

「おい、イリアとマイ。今からお前ら二人でオレにかかってこい」

「え?でもなんでいきなり……」

「というか気に入らないですわね、その口の利き方は。私は受けて立ちましょう。マイはどうなさいますの?」

「ローズ様に対してあんな生意気な態度は私も気に入りません!私も受けて立ちます!」


レイスはマイとイリアを挑発し、二人はそれに乗っかる。そしてまた校舎裏に移動し、リリーが結果を展開する。


「お前ら、このオレの前座になれることを光栄に思えよ。それじゃあローズ、合図を頼む」

「はぁ……合図をお願いします、ね。それじゃあ用意……始め!」

「……動かない?」

「それじゃあ普通に魔法を使わせていただきますわ!……雷よ!」


私が合図をすると同時にイリアとマイは少しレイスから距離をとる。が、レイスはそこに立ったままで一切動く様子を見せない。それに困惑しつつもイリアは雷魔法でレイスに攻撃する。が……


「あ?どうしたよ、おっせぇな」

「な!?いつの間に後ろに!」

「っ、イリア様!……炎よ!」

「はっ、流石のマイ・サヴェリスもこの程度かよ。じゃあ、オレも行かせてもらうぜ!」


レイスは一瞬でイリアの背後に移動して避けた。マイがすかさずレイスに一発火球を撃ち込むが、それもまた避けられた。そして、次の瞬間……


「……ぐっ、あつい……っ!」

「一体何をしましたの……」

「やっぱりお前ら二人とも雑魚だな。よし、前座はこれで終わりだ。オレは帰る。ローズ、明日を楽しみにしてるぜ」


マイとイリアの頬に、火傷の痣ができる。そして二人は倒れて、レイスはすぐに帰ってった。……はぁ、ほんっとめんどくさいな。私は二人のそばまで行って、火傷の痕を消す。……私、あの魔法本当に苦手かも。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る