第39話 悪役令嬢は主人公の家に行く
夏祭りが終わって数日が経過した。……やっぱりダメだ、考えれば考えるほどこのリリーに対する気持ちがわからなくなってくる。
「もう……本当に何なの……?」
多分リリーと過ごしてったらわかるはずだから……今はそんな焦って考えなくてもいいや。ゆっくりと、この気持ちを知っていこう。そんな事を考えていると、アベルが部屋に来る。
「お嬢様、リリー様です」
「え、リリー?どうしたんだろ……」
急にリリーが家に来るなんて珍しいな。大体みんなで何かしようって話した時は私を迎えに来てくれてたけど……もしかして、リリーって暇なのかな?
「おはよリリー、急にどうしたの?」
「ローズおはよ~!えっとね、ローズって今暇?」
「え?うん、暇だけど」
「じゃあローズさえ良かったらさ、うちこない?ほら、前お菓子作るって約束してたでしょ?」
「あ、確かにしてたね!うん、行く!」
そういえばそんな約束もしてたっけ。にしても……リリーの家か。ゲームでもあまり出てこなかったはず。
「よーし、じゃ行こっか!」
「うん!」
そういえば全然気にしてなかったけど……麦わら帽子被ったリリー、凄い可愛い!ものすごい似合いすぎてる!
「今日パンケーキ作ろうと思ってるんだけどさ、ローズと一緒に作りたいなって思ったんだ」
「パンケーキ!いいね!作ろ作ろ!」
と、私達はリリーの家ことクレスアドル邸に向かうのだった。それから数十分。
「あ、もうそろそろ着くよ!」
「うわぁ……リリーの家も凄い大きいなぁ」
「ローズの家も充分大きいでしょ」
やがてクレスアドル邸が見えてくる。そして少し先に目を向けると、花に水を上げている茶髪ポニテのメイドさんらしき人がいた。
「お帰りなさいませ、お嬢様。えっと……そちらのお方がローズ様でしょうか?」
「ただいま、コルス。うん、この子がローズだよ」
「初めまして、ローズ・コフィールです」
「初めましてローズ様。私はリリーお嬢様のメイドをしております、コルス・モスレアと申します」
コルス・モスレア。リリー専属メイドで私でいうところのアベル。とても優しくて植物が大好きな、アベルに引けを取らない人気を持つキャラクターだ。そういえば完全にコルスがいた事を忘れていた。
「私達パンケーキ焼くんだけど、コルスもいる?」
「え、良いのですか?」
「うん!コルスはいつも頑張ってくれてるし!」
「……でしたら、また休憩の時間に食べたいので一つよろしいでしょうか」
「おっけー!ローズも良いよね?」
「うん、私も全然いいよ!」
確かコルスもかなりスイーツが好きだったような。
……いや、やっぱりいざこうやって見ると家とはまた違った広さがあるな。
「えーっと、そうだ。ここが厨房だよ。……まぁ厨房と言ってもお父様にお願いして調理部屋を作ってもらっただけなんだけど」
「そうなんだ!私も今度お母様に頼んでみようかな?もしお菓子を作ったならアベルも気に入ってくれそうだし」
「そういえばアベルも甘いもの好きなんだっけ。コルスも割と甘いもの好きだからさ、メイドって甘いもの好きな子が多いのかな?」
「うん、アベルは割と甘いもの好きな方だよ。……一応年齢も関係してるんじゃない?アベルは二十二だし」
以前アベルと話してた時に聞いたらすんなり教えてくれた。最初は驚いたな、年齢とかってあまり知らなかったから
「そうなのかな?でも確かにコルスも二十一だしな」
「コルスさん、二十一なんだ。もうちょっとだけ若いと思ってた」
何気にアベルの一個下なんだ。やっぱりメイドって佇まいから洗練されてるから、雰囲気が年齢のそれじゃないんだな。
「さ、作り始めよっか。調理とかは私が主にやるから、ローズは魔法で冷やしたり、暖めたりするのを手伝ってくれる?」
「うん、わかった!でも冷凍は初めての試みだから上手くできるか分からないよ?」
「大丈夫大丈夫!ローズならきっとできるよ」
「そっか、ありがとう!」
と、それから私達は調理を開始した。
リリーは作り慣れてるのもあってか本当にテキパキ動いて作っていった。私も、なんだかんだでジークに教えてもらったことを活かして氷魔法を使うことが出来た。そうして数時間が経過して……
「いよーし、出来たー!」
「凄い美味しそうに出来たね!」
「うん!それじゃあ早速食べよっか!はいフォーク」
「うん、そうだね!……いただきます!」
「いっただーきます!」
……これは……物凄く美味しい!今まで食べたホットケーキの中でもかなり上の部類に入るくらい美味しい!なんだか紗蘭と作ったホットケーキを思い出す様な味だな。
「んん~♡美味ひぃ~~♡」
「ふふ、ローズってば本当に美味しそうに食べるよね」
「だって本当に美味しいんだもん!」
「ローズとこんな美味しいパンケーキが作れてよかったよ!」
「私も良かった!今度皆にも作ってあげたいな!」
「確かに!マイやイリアはかなり好きそう!」
「でしょ?でもジークって甘いものどうなんだろ」
「また今度聞いてみよっか!」
なんて事を話してたら、食べ終わってた。
いやはや、本当にスイーツを食べてる時の時間は早くすぎてくなぁ。
「ご馳走様でした。ふぅ、美味しかった」
「ご馳走様でした!また作ろうね!」
「……よし。ローズ、食後の運動をしよっか。ちょっと外まで来れる?」
「え?うん、いいけど」
私はリリーに言われるまま、外に出る。すると、リリーは以前買った魔力増強の指輪をはめた。
「もうちょっとしたらさ、武術大会があるでしょ?」
「うん、あるね」
「それの前哨戦?余興?って言うのかな。軽く私とローズで手合わせしようよ。大丈夫、この庭なら強固な結界が張られていて周りへの損害は抑えられるから」
「……実は、私も一度リリーと戦ってみたいと思ってたんだ。いいよ、やろっか」
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