最強最悪の悪役令嬢に転生した私は、やがてメイドとなる主人公に恋をする。

深月

プロローグ

月明かり照らす夜に。

時計の針は深夜一時を指した頃。私はバルコニーにて涼んでいた。


「今日の月も相変わらず綺麗だな。……ここに来てもう9年が経つのか。……あの子は今何をしているんだろう」

「やっぱりここにいましたか、お嬢様」


と、後ろから私のメイドが来る。


「うん、また寝れなくてさ。あと……二人きりの時は敬語いらないって言ったじゃん」

「あっはは……ごめんごめん、ここに入ってからもう二年くらい経つけど、相変わらずメイド長様が厳しいからさ」

「まぁ良くも悪くも凄い真面目で熱心だよね、あの子」

「五年前からずっとそうだったよね」

「……何度も聞くけど、本当によかったの?婚約を破棄してまで私のメイドになって」

「ここ二年、ずっと大丈夫って言ってきたじゃん」

「だって次期国王なんだよ?彼」

「だったら尚更だよ。私に王妃なんて向いてないし、それに……」

「それに……?どうしたの?」

「五年前、アダリエの祭りに行った時の話覚えてる?」

「え?うん」

「それじゃあ婚約が仮だった話は?」

「覚えてる……って、え?」

「──私は、あなたの事が心から大好きだから」


そう彼女が私に告げた時、とても嬉しかったのと驚きもあった。私も、彼女の事がものすごい大好きだから。思わず、涙がこぼれ落ちる。


「そっ……か。本当は、私もね。ずっとずーっと……心からあなたの事が大好きだったんだ」

「……ずっと。これからもずっとずっと、あなたの傍で仕えさせてください」

「うん……もちろんだよ。これからもずっとずっと、私の傍に仕えていて」


満月が照らす二十歳の夜。私はメイドに想いを告げて、唇を交わす。

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