第4話 悪役令嬢は気弱令嬢を助ける
……さて、とりあえず黒魔道士とラーベルの件はどうにかなった。だからまぁ次は……そうね。本格的にパーティーの準備をしましょう。とりあえず、ワルツが踊れるかどうかの確認と……それと行儀やマナーに関しても。
本来のローズ様は令嬢な為、行儀やマナーに関しては心配する方が馬鹿という程度にはとても行儀がいい。
が今は平民の間に生まれた私が転生したのだから、行儀もマナーも一切知らない。だからあと5日程で行儀とマナーとワルツについて覚えることにしよう。私のせいでコフィール家の名に泥がつくようなことはあってはならないもの。
「……とりあえず、一度覚えてることを紙に映しましょう。」
と、以前と同じように私は紙に記憶を映す。
まぁ確かに覚えてはいるけれど、記憶というのはいつもとてつもなく脆くいつ消えるのかさえ分からないものだから……そういうのに備えてなにかに映すのはとてもいい事。……って紗蘭がいってた。事実、この紙に書いてあることの中には明日にでも忘れそうで、寧ろ覚えてた自分を褒めたいくらいの礼儀等々もいくつかある。
「まぁ、4日で覚えればいいわね。あと一日はそうね……イリアとラーベルを結びつける計画を本格的に立てましょうか。」
……今思えばだいぶこの喋り方も様になってきてる。
まぁ、たまーにボロは出るけど……基本はちゃんとローズ様らしい語尾で振る舞えてはいるから流石に大丈夫なはず。
「あら?そういえば結局重大イベントの確認を忘れていたわ。今確認しなければまたすぐに忘れちゃいそうだから確認しちゃいましょう。確か今は4月6日で……起こる重大イベントと言えば……?ってそうだ!!イリア!!」
4月6日の15時に、イリアはその気弱さからいじめに合う。確かイリアが信じていた人が実はいじめっ子で……それであまり人を信用しないようになり、心を固く閉ざしてしまう。イリアとラーベルをくっつけたい私からしたら、心が閉ざされたままでラーベルを拒まれたりしたらとても困る……ので急ぎイリアを助けに行かなければ!今は14時50分……飛行魔法で行けば10分もかからないわ!よし、急ぎましょう!なんとしてでもイリアを助けるの!
と、急いで家を出て飛行魔法を使い、イリアのいる花畑へと向かった。
「イリアは……いたいた。ちょうどいじめっ子もいるわね。って……あの子達、どこかで見たことあるような?」
……そうだ、思い出した!確か本来のルートでローズ様の仲間で一緒にリリーをいじめていた人だ!
まさかローズ様と会う前からいじめていただなんて……。イリアがいじめに会うのはわかっていたけど、ローズ様と一緒にいるあの子がいじめてる事は忘れていた。
ってそんな事考えてる場合じゃない!早くイリアを助けないと!
「ねぇイリア?私ね、今火の魔法の研究をしてるんだ。だからさ……イリアで実験させてよ。いいでしょ?私達友達でしょ?」
「いや、いや……です。それに、友達だからって何でもしていいわけじゃない……でしょう?」
「は?今まで全部やってくれたのになんで私の実験には付き合ってくれないの?せっかくパーティーがあるんだからイリアを綺麗にしてあげようと思って親切心で言ってるのに……」
「……っ!今までも、本当は全部嫌でしたわ!けれど、あなたが私わたくしの話を聞かないで勝手に私が同意したふうに捉えて私を従わせてきただけでしょう!それに、親切心で私の肌を焼こうというのでしたら余計なお世話ですわ!」
……やっぱりここも私が知ってるルートと違う。本来のルートではイリアは何も言えず彼女達の魔法を肌に浴びて、大きな火傷を負っていたはず。だけど、今私が見ているイリアは全力で反抗している。
「ちっ。どうしても嫌というならしょうがないわね。無理やり実験に付き合って貰うわ!」
と言い、彼女の手のひらから炎が浮かび上がる。確かこれも見た事あるな。名前は知らないけど。彼女は他の火の魔法とはちょっと違った感じで、放つのではなく手にためるタイプ。
なんだっけ……『炎の手』だったっけ?って呼ばれてるらしい。けど、あれに掴まれたら大火傷じゃ済まなさそう……今のよくわかんないルートならイリアがパーティーに不参加する可能性もあるから……もう即手を打つ!
「……水よ!」
極力魔力を弱めて水玉をひとつ作り、彼女が手のひらの火を握りしめる……前に放つ。
パシュンっと音がして、すぐに彼女の火は消えた。
「……なっ!?私の火が……!」
そして私は彼女の前に降りる。
「彼女は本気で嫌がっていたって事くらい顔を見ればすぐわかることでしょうに……。それに、ここは花畑よ?そんな物騒な火では花が燃え尽きてしまうわ。」
「……何よ急に横から入り込んできて。何も知らない貴方に口を挟まれる筋合いはないわ。」
「何も知らない?いいえ、私は知ってるわ。何せ私は彼女の……イリアの友人なんだもの。ひとつ、覚えておきなさい。今後イリアに手を出すようであれば、このローズ・コフィールが許しはしない、と」
「ローズ・コフィール……ろ、ローズ様!申し訳ございません!今後二度とイリア様には手を出さないのでどうかお許しを!」
と、捨て台詞のように吐いて彼女は逃げていった。
よし、ミッションコンプリート!思わずガッツポーズを取ってしまった。
「……?」
そんな私をイリアが不思議そうな目で見てくるのだが……
イリア可愛いぃぃぃぃぃぃぃ!!!!超可愛い!間近で見るとほんっとー可愛い!!もう本当に天使!!
その触りたくなるような綺麗な桃色のロングヘアーも青色と黄色のとても美しいオッドアイもこれ以外に何が似合うのって感じのですわ口調ももう全てがほんっとーに可愛い!
何を隠そうこの私、最推しこそローズ様だが第二の推しはイリアなのである。
それはそれは、もうずっとイリアのグッズもとてつもない程集めている具合には。
「あの……助けていただきありがとうございました、ローズ様。私、イリア・ミシェンスと申します。どうぞ以後お見知り置きを。」
「いえいえ、困っている人がいたら助けるのは当然のことです。それよりイリア様、いきなり呼び捨てにしてしまい申し訳ございません」
「そんな事、全然気にしていませんわ。助けてもらったのですし、何かお礼をしたいのですが……」
「お礼なんて要りませんよ。私が元々そういう正義を掲げていて助けたかったから助けたまでの事ですから。……でも、それでもどうしてもお礼がしたいと思うのならば私の事は気軽にローズと呼んでください。そうしたら私もイリアと呼ばせてもらいますので」
「それくらいでいいのならば是非!そういえば……ローズは来週のパーティーにはお呼ばれしていますの?」
「ええ、呼ばれております。イリアも?」
「もちろん私も呼ばれておりますわ!ですので、また是非会えたならパーティーでお会いしましょう」
「そうですね。では、私はこれで。気をつけておかえりになられてくださいね」
「ええ!ローズこそ、気をつけてお帰りくださいね」
とイリアは微笑む。
本当に可愛すぎて思わずぎゃっ……!と声を出してしまいそうになるが必死に声を抑えて、私はまた飛び上がる。
「……とりあえず黒魔道士よし、イリアもよし。だからあとは礼儀やワルツをしっかりさせてパーティーに望むのみね!」
それから5日間、礼儀作法やワルツの練習を一人で積み重ね、
お母様やアベルからも賞賛され益々やる気を増して、イリア
とラーベルをくっつける方法もちゃんと考え、ついにその日はやってきた。
「ローズお嬢様、お迎えに参りました。」
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