生徒会長庶務

探索隊発表から六時間後。

不死川命は改修を終えた校庭にやって来る。

物集女美夜古の助言通り、小鬼の血によって呪文が刻まれた外壁と小鬼の首を串刺しにした魔除けが目に映った。

校庭には複数の作業を行う生徒の他、何時眠っているのかすら分からない、百千万億生徒会長が立っている。

彼の姿を認識した時、その隣に、昨日見た生徒の姿があった。


「あれ…前に在ったな」


不死川命が声を掛けたが、その生徒は何も言わなかった。

呆然と口を閉ざしていて、異国の瞳で不死川命を呆然と見ている。


「…」


その生徒が何も発しなかったので、不死川命は首を傾げていた。


「?」


決して、声が届いて居ない筈では無いが。

何故、この生徒は話し声に反応しないのか、不思議な様子だった。

すると、割って入る百千万億生徒会長。


「志熊ガンマ、戦闘のプロだ」


そう言って、不死川命が話しかけた生徒の説明を行う。


「彼は生徒会のメンバーの一人でね、庶務として活動している、得意な事は制圧と鎮圧だよ」


気軽に言ってくれるが、全然気軽な内容では無かった。

不死川命は眉を顰めて、百千万億生徒会長に言う。


「どっちも同じ意味だろ」


そう突っ込んだら、百千万億生徒会長は苦笑しながらそれもそうだと頷いた。


「彼は、基本的に使用する武器は銃火器の類だが、…学園にはそれが無いから、ナイフでの戦闘が基本になる、連携する時は覚えておいてくれ」


益々物騒な内容が飛んで来る。

不死川命は我慢出来ずに、突っ込みを入れる様に言った。


「色々気になる事が多過ぎる、何者だよ、銃火器使う状況があったのかよ」


冗談にしては、中々に面白くない事だった。

不死川命の言葉に、百千万億生徒会長はそうだ、と頷いてみせた。

そして、その生徒…志熊ガンマの境遇を教えてくれる。


「…色々と説明は省くけれど、出身地は日本じゃない、異国の、戦争地帯で生まれたんだ、其処で傭兵として戦争に参加していた、所謂…少年兵として活動していたんだ」


とある国、とある部隊、其処で少年兵として人を実際に殺した。

その表情は幼く、童顔ではあるが…不死川命よりも、人の命を奪った経験を持つ。


「異国での戦争で、彼が所属していた反対派が内部抗争で解体、傭兵としての価値を無くした彼を、海外活動をしていた八百万学園の先生がスカウトしたって所だね」


その様に説明して、不死川命は彼を見た。


「…」


殺意など感じない。

それ程までに、人を殺す事に関して無頓着なのだろう。

阿久刀壱心ですら、無意識な殺意を垂れ流していると言うのに。


「こちらに来て、まだ一年、言葉は分かるけど、まだ日本語が分からない…まあ、総合的な戦闘力に関しては、キミたちと同等だね」


阿久刀壱心と、不死川命を見て、百千万億生徒会長は告げる。


「(…彼は『表裏統一計画』にてスカウトされた、裏側に属する生徒だ、本来ならば、ボクと一緒に居てくれた方が都合が良いが…なりふり構ってはいられないだろう)」


百千万億生徒会長は、探索隊に一人でも生徒会の人間を入れるべきだと思った。

それは、学園の頂点に立つ人間として、探索隊と言う重要な仕事を他人のみで編成させて向かわせる事が無責任だと思った。

だから、せめてでも、生徒会の一人を同行させる事にしたのだ。


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