第32話 襲撃

「いや~うまくいきましたね」


エルフィア辺境の村。

村の外にはエルフの男と老人の死体が転がり、

見回りをする冒険者が数人。


その中で光の灯る唯一の建物。

その中では男たちの喜び声と、

女の悲鳴が聞こえてくる。


その建物の中の一番高価なソファに

ふんぞり返るレッズ。


「ああ、そうだな」


レッズは部下の言葉にそう答えて

軽くワインを口に呷る。


「奴隷狩りに手を出すのは今回が初めてでしたが、

こんなにうまくいくとは。

さすがはレッズさんのギルドだ。

なにより、最も警備の厚かったエルフィアで

奴隷狩りを成功させれたのだから」


「信用さえ得られればこっちのもんだ。

こいつらは自分たちを守ってくれる

存在がほしかったんだからな。

だから、裏切るのも簡単。

にしても、おい!!! お前ら!」


レッズはエルフの女を弄ぶ部下たちに目を移す。


「そいつらは商品だ。傷はつけるなよ」


「へーい」


そう返事をした冒険者たちは

再びエルフたちの方を向いた。


そのうちのとある冒険者が片隅で怯えて震えている

エルフの女に目を向けた。


「おーい。何隠れているのかな?

他の子たちは犯されているのに、自分だけ

何もされないように気配を消していたのかな?」


がくがくと震えるエルフの腕を冒険者が掴んだ。


「やだああああ!!! ひゃあ!!

離して!!!」


「カハハハ!! 離すわけないだろ!!」


冒険者がエルフを床に押し倒して上から

覆いかぶさる。


「やだやだやだ!!

誰か助けて!! お母さん!! 

お父さん!! 助けて!!」


「誰も助けになんか来ねえよ!!

お前の両親はすでに殺された後だからな!!

ほらおとなしく股を開けよ!!!」


ああ。これが地獄か。

彼女はそう思った。

このまま知らない男に襲われて、

売られて、家畜のような扱いを

死ぬまで強いられる。


何のために生まれてきたのだろう。


誰か。助けて。

誰でもいい。なんでもする。


だから、お願い……!!!!!


その瞬間、建物の入り口のドアが内側へと

蹴破られた。


爆発音に似た衝撃が建物に響き、

室内に扉の破片が散らばり、動揺が広まる。


室内にいた皆が扉の奥に目を向ける。


その暗闇から、


「こんばんは~」


素っ頓狂な声で入ってくる。一人の男。


彼は黒いマントに仮面をしていた。


「いや~道に迷っちゃってね。

ちょっとお尋ねしたいんだけど……

レッズってのがいるギルドはどこ?」


その言葉に全員が戦闘態勢に入った。


「レッズは俺だが?」


「ああ、そうか」


「で? 何しに来たんだ?

まさか、お前ひとりでエルフの女を

助けに来たとは言わないだろうな?」


そのレッズの言葉に冒険者たちがくすくすと笑う。


「エルフの女?」


しかし、仮面の男は不思議そうな声で

そう口にする。


「そのエルフの女は一体どこにいるんだ?」


「……は?」


その言葉にレッズはエルフ達を捕えていた場所を見る。


そこにはレッズの部下たちの死体しかなかった。

さきほどまでいたはずの

エルフの女たちが一人もいない。


「お前ら! 武器を構えろ!!」


レッズは慌てて部下に指示を出す。


「な、なにしやがった! お前!!

エルフをどこにやった!!」


「は? 知らねえよ。

お前らが目を離したから逃げたんじゃないのか?」


「くそ! これより二つのグループに分かれる!

アゼ!! 数人連れて行って外でエルフの

捜索をしろ!」


「了解しました」


レッズの言葉に包帯を巻いた

謎の冒険者が外に飛び出る。

それに数人の冒険者がついていった。


残りの冒険者たちがレッズのもとに集結する。


その数、26人。


「なるほど……聞いたことがある。

無法大陸で奴隷狩りを行っている

冒険者や売人を襲う謎の冒険者がいると。

その男は確か、仮面をしているって噂だ。

お前がそうか」


仮面の男は何も答えずに双剣を鞘から抜いて

遊ぶように手で回し始める。


「どうやったかは知らないが逃がしたエルフの

女は直ぐに捕まる。

アゼが逃亡者を逃がしたことは一度もない。

お前のエルフを解放する企みも

無駄だったということだ」



その言葉に仮面の動きがぴたりと止まった。


恐れを抱いたか?

レッズに少し余裕が出てくる。


しかし、仮面は再び双剣をくるくると回し始めて

こう言った。


「お前……何か勘違いをしているぞ?」


「勘違い?」


「俺の目的はエルフの解放じゃない」


その言葉にレッズの余裕が一瞬にして消える。


「エルフの解放じゃない?

じゃあお前の目的はなんだ!

何しに来た!」


「俺の目的は……………復活だ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る