第14話 崩壊
「いやーお見事。
まさかあのダンジョンボスを倒してしまうとは」
現れた男に俺達は当惑した。
「青焔!?」
姿を見せたのは血に染まった双剣を手にした
雲隠れの衆のギルドボスだった。
まさか……こいつ俺達のことを切ったのか!?
「な、なんでお前がここにいるんだ!?」
「俺だけじゃないさ。グレイス。
周りを見てみな」
グレイスさんは視線だけでよく周りを観察した。
「な……」
そこら中に雲隠れの衆に所属している
アサシンの冒険者たちが潜んでいた。
彼らは手で印を結んでいる。
確かあの印ってAランク以上の
アサシンスキル【拘束結界】じゃ……
あれはかけるアサシンが多ければ多いほど
その結界の力が増すはず。
だから、グレイスさんでさえ、今動けないのか!?
「なんで俺らを拘束する!?
何が狙いだ!?」
「……グレイス。君の首だ」
その恐ろしく冷たい言葉に俺は
背筋が凍った。
今……この人なんて……?
その隣でハンターさんの姿が消える。
そうか!
ハンターさんならここから逃げれる!!
しかし、青焔は余裕そうな表情で、
「お前ら。そいつは印をつけた所に
ワープできる。さっきの戦いでそいつがどこに
印をつけたか見てただろ。そいつがどこに
ワープしても殺せるように待ち構えとけ」
その言葉に数人のアサシンが移動した。
こ、こいつら!
さっきの俺達の戦い見てたのか!?
ハンターさんは顔を渋面させながら矢を放つ。
その矢を青焔は軽く避けた。
「捕らえろ」
その号令にアサシン達がワープのできない
ハンターさんを地面に叩き落とした。
「く、くそ!!!
なんで上の階層にワープできないんだ!!!」
「ははは。もうわかってるだろ?
お前が上の階層につけた印を、
俺達が消したんだよ」
青焔は必死に逃げ惑うハンターさんを
嘲笑しながら言った。
「消した!?
そんなはずはない! 僕のつけた印の場所を
お前が知っているはず」
「あ、言い忘れてた。その印の場所を教えたのは
俺じゃない。教えたのは」
「俺だよ」
ハンターさんの背後に何か風のようなものが
接近したように見えた。
―――――――――――――――――――――――
同時刻。
【1班】
「おい、餓狼! さっきの揺れを
感じたか!?」
聖騎士ルンベルが動揺した様子で
そう尋ねた。
3班同様、休憩を取っていたとき、
感じたこともない地鳴りを聞いて
冒険者たちがざわめき立った。
そんな中でいつものように表情一つ変えずに
餓狼は答えた。
「……直ぐに他の班と合流するぞ」
【2班】
「ちょっと何だったのよさっきの揺れ!」
「分かりませんが、とりあえずここは
一度、全班と合流すべきかと。このベルニア、
非常に嫌な予感が致します」
「ええ。そうね。ほら!皆さっさと立って!
行くわよ! 皆!」
2班のリーダーであるローズが
後ろに控えていた冒険者たちに声をかける。
その中には青焔の姿もあった。
―――――――――――――――――――――――
何が起こってるんだ……
俺が見ているのは現実なのか……?
夢だよな? 夢じゃないと……こんなの……
受け入れられない……
俺は地面に転がったハンターさんの首に
視線が静止していた。
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!!!!!!
あんなに優しく接してくれたハンターさんが!
まだ何も恩を返せてないのに………
誰だ………誰がこんなことを………
俺はゆっくりと顔を上げて怒りの視線を向ける。
そいつに。
けど、俺はそいつを見て言葉を失ってしまった。
ハンターさんが殺された事実以上に
受け入れられなかった。
それはエリシアさんもグレイスさんも
同じだっただろう。
きっと俺以上に信じられなかったかもしれない。
けど、まだ受け入れられない俺に、
グレイスさんの弱々しく吐いたその名前が
現実を突きつけてきた。
「……餓狼……?」
「う、うそ……」
エリシアさんとグレイスさんは
幽霊でも見たかのような表情だった。
「が、餓狼お前……何やって……」
「俺が青焔に教えた。
ハンターのワープ地点を。
そして、全て消した。逃げられないようにな」
「は……? 嘘だろ……?
何とか言えよ餓狼!!
なんで!!! どうしてハンターを殺した!?
仲間だろ!? なのに、なんで!!!」
「お前を殺すためだ」
そう餓狼はグレイスさんに答える。
「……殺す?」
「ああ。そうだ。ここはお前を殺すために
用意した場所だ」
「……な、何言って」
「おかしいと思わなかったか?
31層のモンスターに歯ごたえがなかっただろ?
事前に俺と青焔が協力してここまで
攻略しておいたんだ」
「な、何のために」
「だーからー! お前を倒すためだって
餓狼が言ったでしょ」
二人の間に青焔が割って入る。
「いやー、俺達の関係を勘付かれないために
不仲を演じるの苦労したよ」
青焔は気色の悪い笑みを浮かべてそう言った。
「俺達の目的が一致したんだ。
グレイスを殺すっていうね。
そもそも俺と餓狼は同郷だし」
「裏切ったのか……?」
グレイスさんは動揺した目で餓狼を見た。
「そうだ。
俺はお前を殺したかった」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます