第12話 怪物

誰かが呼んでる気がする。


「起きて!! レオ!!」


誰だ?


「ここにいたら」


何してたんだっけ?

……そうか……俺……


「踏み潰される!!!!!」


はっと目覚めた俺は横に飛んだ。


ずどん!!!


俺の背後に巨人の足が落ちる。


「あ、あぶねぇ……」


なんで俺体治ってんだ!?


「よかった……」


どこからかフェアリンの声がする。


「治してくれたのか!?」


「そうだよ! まだ息があってよかった」


「た、助かった……死んだかと思った……」


いや、フェアリンの力がなければ死んでいた。


「他の皆は!?」


俺はすぐさま首を巡らせた。


「え…………」


そこら辺にぐちゃくちゃになった

死体が転がっている。


内臓が飛び出て、もう誰か分からない者ばかり。


まるで地獄にいるような気分だった。


「な、なんだよ……これ!!?

フェアリン! グレイスさんは!?」


「……食われた」


「くわ……れた?」


「……あの巨人の口の中に落下した」


「は、は!? グレイスさんが

そんなんで死ぬわけ無いだろ!?

エリシアさんは!? 

俺より先にまずエリシアさんを!」


「もう治したよ。今他の人の治療をしてる」


「ほ、本当か!?」


周りを見ればたしかに岩陰の中で

誰かの治療をしている者がいた。


俺に気づいて手招きをしている。


俺は巨人に気づかれないように、アサシンスキルの

忍び足を使用してその岩陰に滑り込んだ。


「よかった! レオも無事だったのね!」


「エリシアさんも!」


俺はエリシアさんが治癒してる者を見てほっと

胸を撫で下ろした。


「ハンターさん!」


「や、やぁ……流石にこれは死ぬかと思ったよ」


「よかった……よかった……本当に」


「レオ。グレイスはどうなった?」


「グ、グレイスさんは……」


俺が説明しようとしたそのとき。


巨人が突然悶え苦しみながら膝をついた。

悲鳴を上げながら口元を抑えている。


その直後だった。

巨人の歯が1本消し飛んだ。


その歯と同時に何かが出てくる。


「グレイスさん!?」


俺の歓喜と共に、血だらけのグレイスさんは


「うおおおおおおおおおおおおお!!!」


と雄たけびを上げた。


「グレイス!!! こっち!!!」


グレイスさんがエリシアさんの

声に気がついてこっちに駆け込む。


「お前ら! よく生きてた!」


「グレイス! それよりも治療を」


「いや、いい。エリシア。

俺はこの状態の方が強いからな。

それよりも、生き残ったのは四人だけか」


「僕もいるよ」


その言葉にグレイスさんがきょろきょろとする。


「もしかして、この声の主が

ホーリーガーディアンズのヒーラーか?」


「いかにも」


「ははは。これは幸運。

ヒーラーが二人もいるなんて。

だが……」


グレイスさんが柄にもなく暗い顔をする。


「どうしたのグレイス。

もしかして、そんな顔をするくらいあれは強い?」


ハンターさんがそう尋ねると

グレイスさんが頷いた。


「これはあくまで俺の感覚だが、

鬼神の強さに比べると、

あの巨人は星15くらいかもな」


「15!?」


「ああ。まだ戦ってないから分からんが、

あいつの歯を破壊するのでやっとだった。

今のこの状態が俺の中で最高の力を出せるのにだ」


その言葉に俺はぞっとした。


最強の冒険者がこんな顔をするのだ。


俺なんか蟻同然ではないか。


「どうした? レオ」


そんな俺の顔を見て察してのか、グレイスさんが

俺の頭を撫でる。


「俺らは最強のギルドだぞ?

負けるわけがない。

サクッとやってくるさ。

傷は治ったか? ハンター」


「治ったよ」


「なら、ワープして他の班に

報告しに行ってくれるか?」


「了解……ってあれ?」


「……どうした?」


「ワープ地点が一個もない……」


「は!? どういう……」


直後、巨人の拳が迫った。


「逃げろ!!!」


間一髪で回避したが、

もう隠れる場所はなくなった。


「……どうする? グレイス」


不安げにハンターさん、エリシアさんが

グレイスさんの回答を待った。


もしかしたら、もうグレイスさんも諦めて


パシン!


その直後、グレイスさんの

拳と手のひらが合わさる。


「おーし、なら!

この5人でこいつ倒すか!」


「え……」


「他の奴らには悪いが、俺等でこいつ仕留めて、

こいつから手に入るアイテム」


瞬間、巨人の拳が迫る。


それに対応して、グレイスさんも拳を突き出した。


二つの力が拮抗する。


ダン!!!!


重々しい打撃音が響き渡り、

巨人がたたらを踏んだ。


「いただこうぜ!!!」


そのグレイスさんの姿に力が湧いてくる。


「エリシア! 透明の人!

俺の防御力を上げてくれ。

ハンターには攻撃力バフを。

レオ! お前は観察眼で弱点を探れ。

普通にやったら俺らはこの巨人を倒せない。

お前が鍵だ」


「は、はい!!!!!」



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