第11話 落ちる
聞くところによると、このフェアリンという
妖精の存在はホーリーガーディアンズの
ギルドマスターしか知らないらしい。
なんでも世界が知りたくて、妖精の村を
出たらしいが、闇ギルドに捕まり、奴隷として
売られそうになったところを聖騎士ルンベルに
助けてもらったらしい。
そこから二人でギルドを立ち上げたとか。
幸いにもフェアリンは自分の姿を透明にできる
イーターのようで、ギルド内では恥ずかしがり屋で姿を見せたがらないヒーラーとして
活動できているとのこと。
「いやーでも、びっくりしたよ!
僕のこと見れるやつがいたなんて。
その観察眼っていうイーターだからかな」
「た、多分」
すっげぇ喋るなこの人。
もう30分ぐらい話してる。
話し相手がルンベルさんしかいなかったから
姿を見せて話せる相手に会えて嬉しいんだろうな。
「姿を隠してるのは、闇ギルドに狙われるから?」
「そうだよ! 妖精っていくらで
売られると思う? 10億だよ10億!!
絶対正体バレないほうがいいでしょ!?
あ! 僕のこと狙わないでよ!?
ルンベルに言いつけちゃうから!」
「言わないよ……
にしても、妖精族ってまだ存在してたんだ」
「してるよ! 勝手に殺すな〜!
てか、君レオだっけ?
他の冒険者に比べて弱そうだね」
ムカつくなこの妖精。
捕まえて売り飛ばしてやろうか。
「他の人達が強すぎるんだよ!」
「アハハ! それはたしかに言えてるかも!」
「てか、俺そろそろ戻らないと。
グレイスさんに怒られる」
「僕もついていこっと」
「なんでだよ」
「だって、ルンベル強すぎてつまんないし。
君の方が弱くてハラハラドキドキするような
戦いするかもだから」
「売り飛ばすぞまじで」
―――――――――――――――――――――――
【1班】
「思ったよりも強敵に出会わなかったな、餓狼。
聞いてるのか?」
「……ああ……聞いてる」
いつも無愛想で口数の少ない餓狼だが、
今日はいつにも増して静かだなと
ルンベルは感じた。
(未開の地だし、あの餓狼といえど、
緊張しているのか?)
ルンベルはそう思うことにした。
【2班】
「思ったより、呆気ないわね!」
モンスターを踏み潰してローズはそう言う。
「もう少し厳しい戦いになるかもって
期待してたけど」
「いいじゃないか、ローズ。
それよりも、君の綺麗な顔にモンスターの
汚らしい血が。俺が拭いてや」
「近寄るな」
その鋭い視線に青焔の足が止まる。
だが、それに対して青焔は動揺している
様子もなく、
「相変わらず、いい表情をする……」
と不気味なことを口にした。
(気色の悪いやつ。
うちのベルニアも大概だけど)
ローズはモンスターにトドメを刺そうとしている
黒衣のベルニアに視線を移した。
「ああああ………なんと罪深い………
罰せられるべきなのだ………
罪罪罪罪罪」
ベルニアはモンスターを倒すときに毎回そう
口にするのだ。
仲間とはいえ、不気味で仕方がなかった。
―――――――――――――――――――――――
結局、ついてきたフェアリンと共に
グレイスさんの元へと戻った。
「す、すみません!
遅くなりました!」
「おそおおおおおい!!!!!!」
ゴツン! とグレイスさんからゲンコツをくらう。
「心配したぞ!!」
「すみません! 迷ってて!」
くそぉ……フェアリンの長話がなければ
こんなことには。
今頃、姿を隠してケラケラ
笑ってるんだろうなぁ……
「まぁまぁグレイス。
無事に帰ってきたんだし。そのくらいにして」
エリシアさんが割って介入してきてくれた。
「けどな! 俺は心配で」
「はい、レオ。ご飯できてるから食べるのよ?」
「は、はい! ありがとうございます」
それからグレイスさんの説教を
受けながら飯を食べた。
こんなにも俺のことを思って
怒ってくれているのは素直に嬉しい。
だからこそ。自分の今の無力さが悔しい。
この半年死ぬ気で頑張ってきた。
けど、やっぱりまだまだだ。
できて索敵。このレベルの
モンスターと戦うなんてできない。
くそ……くそ……!
そう思っていたときだった。
俺の観察眼が活躍しないのが、
本来は平和でいいことなのだと
このときの俺は考えもしなかった。
ぞくっと背筋が凍った。
来た。
あの時と同じだ。
ダンジョンがおかしい。
吐き気がする。
死ぬ……死ぬ………死ぬ……
ここにいたら死ぬ………………………………
死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ
「どうした? レオ」
まるで金縛りにでもあったかのような
体の硬直がグレイスさんの言葉で解ける。
「グレイスさん!!!!!
み、皆!!!!! 今すぐここから!!!
離れて!!!!!!!!!!」
そう叫んだときにはもう遅かった。
感覚的には海。
真っ暗な底が見えない海が近い。
何がいるのかも分からない。
ぞっとする感覚。
その恐怖が視界から流れ込んでくる。
俺の視線はずっと下を向いていた。
そこから来るとはっきりわかった。
俺の異変を察知して皆が移動をしようとした。
けど、それは遅かった。
突如として俺達が踏んでいた地面が崩れた。
「なっ!?」
落下する。
31層から更に深くへと。
なんでこんなことが。
どうして………どうやって………
俺は下へと落ちる中、周りを見る。
巨大な手!?
なんだあの手……腕がどんどん縮んでいく。
下へと俺達と共に潜っていく。
まさか……下の階層から上の階層に腕を
伸ばした正体がいるのか!?
31層……32層………33層……
34層……35層………
マーブルダンジョンの歴史によれば、
ダンジョンボスは5の倍数ごとに
現れたとされている。
ということは、この階層に……星10を超える
モンスターが………
「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」
地鳴りのような低く重々しい叫び。
俺は35層の床に落下する直前で
そのモンスターの姿を捉えた。
それは体調が30メートルを超える巨人だった。
「く、くそ……! 死ぬ」
俺の意識は地面に激突した瞬間で途絶えた。
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