パーティーを追放された最弱の俺、最強のギルドにスカウトされる

I.G

第1話 プロローグ

何となくだが、

こうなることは予想できていた。

昔からよくあることなのだ。


だから、俺はパーティーリーダーの

レッズに呼び出され、


「レオ。お前クビだ」


そう告げれらても

驚きはしなかった。


レッズ・リオン

剣士

冒険者ランク C


けど、何か心が抉られたような

気持ちになった。


「……理由は……何なんだよ」


「そのレッズ様に対する

態度のせいでしょ。

いつまでもランクFのくせに」


レッズに隣に座る

リンリンが俺を威嚇する。


リンリン

魔法使い

冒険者ランク D


俺より後にパーティーに入った彼女が、

いつの間にか俺を

見下すようになっていた。


「クビを宣告された理由は

お前が一番分かるだろ」


俺の方を全く見ず、無関心そうに

窓の外を眺めていた屈強な男。

グランドが唐突に口を開いた。


グランド

戦士

冒険者ランク D


「なあ、レオ。

お前とこのレッズパーティーを

作ってからもう一年経ったな。

今ではリンリン、グランド、そしてアメリア。

優秀なメンバーが集まった。

だからな、俺はそろそろ次の段階に

進もうと思うんだ」


「次の段階……?」


「俺はギルドを作る」


その言葉に衝撃が走る。

ギルドに所属するのは冒険者の憧れであり、

所属できればクエスト受注やパーティー

仲間の募集など、安定して冒険者活動ができる。

しかし、この世界のギルドの

最大上限は30と定められており、

それ以上はギルドを設立できず、

今は既に30個のギルドが存在している。


故に、自分でギルドを設立するには

既存のギルドに対して、


「ギルドバトルを申し込んで

ギルドの座を手に入れるのか?」


「いいや? そのつもりで動いていたが、

序列30位のギルド長が

それを察知したみたいで、

ギルドの長の座を譲ってくれることになった」


「……え」


そんなの前代未聞だ。

つまり、30位のギルド長が

降伏したということじゃないか。


「俺としてもわざわざ戦わずに

ギルド手に入れられるのであれば、

そうする。ただ、条件があるんだ。

俺が手に入れるギルドの現メンバーを

誰も除隊させないこと。

そして、そのギルドメンバーは今96人。

ギルドのメンバー上限が100人だから、

ここにいる誰か一人は俺のギルドに

所属させられない。

だから、俺はお前をここで切り捨てる」


言葉が出なかった。

レッズとはこの一年、

共に死に物狂いで戦ってきた。


なのに、こんな扱いを受けるなんて。


「レオ、お前とは同じFランク同士で

このパーティーを始めたが、

俺とお前の差は開くばっかりだ。

もう正直」


その瞬間、静かにしていた

アメリアがばっと立ち上がる。


アメリア

ヒーラー

冒険者ランク D


「……アメリア?」


俺は期待してしまった。

彼女と知り合ったのは

半年前。彼女が一人ダンジョンで

倒れているところを保護し、

レッズに彼女をヒーラーとして

雇うことを打診した。


もしかしたら、アメリアなら


「もうこれ以上、レッズさんのこと

悪者にするのやめてくれませんか」


そのアメリアの聞いたこともない

冷たい声に背筋が凍った。


「クビって言われましたよね?

いつまでここにいるんですか?

理由を教える義務もないのに、

レッズさんは丁寧に説明しています。

それを察する頭もないんですか?」


「おい……アメリアやめとけ」


「言わせてくださいレッズさん。

前々から私はこいつに

イライラしてたんです」


「わぉ……こんなアメリアを

ベッドの上以外で見たの初めてだ」


グランドが面白そうに小声でそう呟く。


「貴方、どうしてランクがFの分際で

レッズさんに物を言えると思ってるんですか?

いつまでも成長しない。

ランクは上がらない。矢は敵に命中しない。

なのに、ダンジョン内では

ここが危ないかもとか根拠のない

不安を我々に叫ぶし。

もうほんとイライラするんですよ。

貴方みたいな弱いくせにパーティーを

仕切ろうとするやつ」


「そんなつもりは……」


「はっきり言って足手まといなんです。

レッズさんはきっとSランクまで

上り詰める才能があります。

だから、もうやめてくださいませんか?

これ以上、レッズさんの足を引っ張るの」


それ以上、何を言われたかは覚えていない。


ただ、がむしゃらに荷物を抱えて

宿舎を出た。

行く当てもない。

ただ、ひたすらに遠くに行きたかった。


悔しくて、情けなくて、心が痛くて。

もう15才にもなるのに涙が溢れてきた。


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