KAC20244 ダイイングメッセージ
ケロ王
KAC20244 ダイイングメッセージ
「犯人はお前だ!」
探偵、
その様子を私は、指を握りながら聞いていた。
その言葉に、やっと事件が解決したと安堵していたのは金吉の妻である
「やっぱり、あなたが夫を殺したのね。どうせまた借金作ってどうしようも無くなったんでしょうけどね!」
彼女は人差し指をさすりながら、動揺する柴夢に罵声を浴びせる。
「やれやれ、ようやく解決ですか」
「一時はどうなるかと思いましたぁ」
その隣で胸を撫で下ろしているのは執事の
事件の始まりは一昨日の晩、書斎で金吉がナイフで心臓を一突きにされているのを発見されたところから始まった。
彼は何故か右手に爪切りを握り締めていて、犯人がこじ開けようとした形跡はあったものの、あまりに強く握りしめられていたため、諦めたのかそのままにされていた。
彼の握り締めていた爪切りは重要な証拠と思われていたが、先にアリバイの検証をしたところ、一人だけ死亡推定時刻にアリバイの無かった息子が探偵に犯人として示されていた。
「全員のアリバイを検証した結果、息子である柴夢以外に犯行は不可能であった。ゆえに、犯人はお前しかいない!」
「果たして、そうでしょうか?」
自信満々に断罪する探偵に対して、私はにやりと笑うと異議を唱える。
「しかし、他に犯人を指し示す証拠などないではないか!」
「いえ、ありますよ。被害者の手に握られていた爪切りです。私の見立てでは、これはダイイングメッセージです」
「馬鹿な?! ならば、犯人は誰だというのか?!」
驚く一郎に私は含みを持たせて言う。
「それは……爪切りを調べればわかります」
私の言葉に探偵は爪切りの中を調べる。
すると、切られた爪の中に1つだけ皮膚の切れ端のようなものが入っているのが見つかった。
「これは?」
「ささくれですよ。そう、金吉さんの残したダイイングメッセージはこのささくれです」
私は自信満々に告げるが、一郎はどうやらわかっていないようで、聞き返してきた。
「それがなんだと言うんだ? 誰のものかもわからないじゃないか?」
「いいえ。そのささくれは、奥さん。あなたのものだ!」
「そんな、何を証拠に!」
「奥さんは先ほどから人差し指を気にしていましたよね。今、ここで見せていただけますか?」
私の言葉に奥さんは明らかに動揺する。
しかし、全員のいる前で拒否するのが難しいと悟った彼女は、渋々ながら手の甲を見せる。
そして、彼女の右手の人差し指のところにささくれの跡があった。
「これが証拠です! 奥さんは、旦那さんの浮気を追求しながら、気になっていたささくれを爪切りで切ったのです! そして、口論になり殺害したのです。彼女が爪切りでささくれを切っているのを見ていた旦那さんが、死の間際に爪切りを証拠として残したのです」
決定的な証拠を突き付けられた彼女は「私じゃない。私はやっていない」と叫びながら警察へと連行されていった。
後日、ささくれをDNA鑑定した結果が出てきたので、私は話を聞きに行った。
「はい、このささくれは、確かに現場にいらっしゃった方のものとDNAが一致しました。その方とは――あなたです」
結果を報告しに、関係者の前で説明した男は、一人の人物を指さした。
それは私であった。
「そう、
「そんな?! 何故?」
「それは被害者が手に持っていた爪切りは奥さんのささくれを切ったものではなく、あなたのささくれを切ったものだからですよ。もちろん、爪切りにもあなたの指紋がばっちりと残っていました」
こうして、私の初めての事件は幕を閉じたのだった。
KAC20244 ダイイングメッセージ ケロ王 @naonaox1126
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