異世界ファンタジーの世界に飛んだ手品師の話
山瀬海一(山瀬うみかず)
プロローグ 手品師と異世界
英国は相変わらず霧が濃い、小雨が降り続け地面には水溜まりができている。傘を差さずに歩いていると紅茶の匂いとか飯処から匂いが漂ってきた。どうやら、もうそんな時間らしい。
倫敦には仕事できたが、やはり体には合わない。という言い方は、英国紳士には失礼すぎる話か。
ああ、俺の話をしよう、俺の名前はエル・ファルネス。子供のころから天才手品師として世界を飛び回っている。もちろん、全部美味しい話ばかりではない。夢を見るのであれば、いい話を見ることをお勧めする。
さて、俺の話をすると有名になったのはいい。けど有名になればなるほど、現実はとても重く辛いものだ。ネット民からは叩かれるし、そりゃあ陰口も少々。だって手品は種も仕掛けがあるから、時代がうんたらかんたら言ってくるんだろうね。
脱線しそうだ。
今は、英国に来てテレビが回るまで暇だから、観光をしているところだ。
鳩達の体調管理や、動物達の管理も怠ってはいけない。
まあ、いろいろとあるんだよ、世界には。
とりあえず、鳥たちを解放したいので、俺は一度鳥たちを自由に羽ばたかせられるであろう、森へと向かっている最中なわけよな。
英国の中の森は結構暗いし、一人で入ってはいけないっていう場所だけど、ここ以外はなんか許可とか取らないといけないから、ここじゃないといけないし。
面倒だからね、俺は面倒くさがりやなんだ。
雨雲もあってか、夜みたいに真っ暗だった。
俺は、懐中電灯を取り出して、歩いていく。鳩たちが騒がないのは気になるが、あたりを見渡していると、なにかにぶつかった。驚いて前を向くと、大きな家があった。それもへんてこな家、お菓子の家のようなイメージをしてくれたらわかりやすいだろう。
お菓子なわけがない、ていうか、ここは立ち入り禁止では? 勝手に家を作っているのか。
好奇心が強い俺は、少し考えてからノックをしてみることにした。
そう、それが間違いだということに気が付かずに。
ノックをしても向こうは無言、やっぱなにもないのかなと思って押してみると、手がチョコの扉に埋もれていった。
泥のような生暖かい感触、それに吸い込まれていく。
「え、ちょ!?」
まずい、これは非常にまずい、これは魔の物かなにかだったのか!?
パニックになっていると、どんどん体は吸い込まれていくし、抜け出そうと壁に手を当てても、吸い込まれていく未知なることに遭遇すると手も足も出ないなんて。
意識も朦朧としていく。
あ、これはだめだ。
俺は目を閉じて諦めた。
だって、無理なもんは無理! 死ぬときは死ぬ。それが人間ってものだから。
* * *
「……い」
なんか声が聞こえてくる。
「……おい!」
思いっきり蹴り飛ばされて、俺は悲鳴をあげた。
「いったい! なにすんだコラァ!」
「おい、人間風情がなぜ俺の家にいる」
「はあ!? 何言って……」
全体を見てみる。
長身、見たこともないくらい、絵画に書かれたような絶世の美女のような男、男と断言できるのは美しくも低い声だからだ。
服装は派手で、アラビアの踊り子のような恰好をしているけど、耳がとがっていて、まるでエルフという妖精のような恰好をしていた。
なんだ、こいつ。
コスプレか?
「ここは、どこ?」
漆黒の長髪のコスプレイヤーは答える。
「ここは、俺の家だが」
「家、いやいやいや、ここ絶対違うよね? 服装も違うし君の耳は」
彼は怪訝そうな顔をした。
1番俺がしたい表情だけどね!
「何を言いたいかはわからんが.......」
「だーかーら! ここはどこって話! わかる!? 国の名前!!」
男はもっと眉間に皺を寄せていった。
「エメラルドの国だが」
「エメラルドの国ぃ?」
俺は思わず上ずった声を出しながら、周りを見渡す。
確かにあの時入った家と同じく、お菓子の家だが……。
「ここ、イギリスじゃないの?」
「イギ……? なんだそれは」
頭の中が真っ白になった。
異世界ファンタジーの世界に飛んだ手品師の話 山瀬海一(山瀬うみかず) @jougo1208
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。異世界ファンタジーの世界に飛んだ手品師の話の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます