第5話 心の繋がり、夢への架け橋
みつが初めてステージで歌った夜から数週間が過ぎ、歌声喫茶はさらに多くの人々で賑わう場所となった。みつの勇気ある一歩は、他の人々にも新たな可能性を示し、店内はいつも暖かい雰囲気に満ちていた。
ある日、哲治がみつにある計画を打ち明けた。「この喫茶店で、小さなコンサートを開きたいんです。みつさんも参加してくれませんか?」哲治の提案に、みつは驚きつつも、心躍る思いを隠せなかった。歌声喫茶で過ごすうちに、彼女は自分の中に眠っていた音楽への情熱を再発見していたのだ。
計画の日が近づくにつれ、喫茶店はコンサートの準備で忙しくなった。沙羅や他の常連客たちも、それぞれができることを手伝い、みつも積極的に関わっていく。このプロジェクトを通じて、喫茶店のコミュニティは一層固く結ばれていった。
コンサート当日、歌声喫茶は期待に満ちた人々でいっぱいになった。みつは開演前に緊張で手が震えるのを感じながらも、これまでの経験が彼女に勇気を与えていた。ステージに立つと、見慣れた顔ぶれが彼女を温かく見守っているのが見え、心が落ち着いた。
コンサートは、沙羅の力強い歌声で幕を開け、次々と常連客たちがステージに上がり、個性豊かなパフォーマンスを披露した。みつの番が来たとき、彼女は深呼吸をして、ピアノの前に座った。そして、これまで練習してきた曲を心を込めて演奏し、歌い始めた。
彼女の歌声が喫茶店に響き渡ると、観客からは暖かい拍手と歓声が起こった。みつは自分の歌が人々の心に届いていることを実感し、演奏を終えると大きな達成感に包まれた。彼女は、音楽が自分にとってただの趣味ではなく、もっと大きな意味を持っていることを感じ始めていた。
コンサートの終わりには、哲治がステージに上がり、参加した全員に感謝の言葉を述べた。そして、この夜を通じて、歌声喫茶がただの喫茶店ではなく、夢や希望、そして心の繋がりを育む場所であることが、改めて全員に認識された。
みつはその夜、新たな夢を見つけた。自分の音楽を通じて、人々に感動を与え、共感を呼ぶこと。歌声喫茶での体験が、彼女にとって夢への架け橋となっていたのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます