冥界転生~必ず天国にたどり着き成仏してやる~

@shirano

第1話 救世

「ん、、、、、あっ、、、、、、イっ、、、、、」


嬌声きょうせいが部屋に甘く揺蕩たゆたう。

部屋の温度が全て、その男女の2人に凝縮してまとわりつくよう。

ゆえに女の声は、体を一度離れればしんと冷えて響かず、床に積もる。


密事はひっそりと、喘ぎの散り積もった床の上で。


情事のいただきに達したその転瞬、女の体から深紅の炎が花咲くように膨れ上がるように見え、部屋の壁に2人の陰を色濃く残した。


「はぁ、、、はぁ、、、、、うっ、、、はぁ」


橙色の豆電球の下。

硬直した影がにわかに溶けるように崩れ、こちらの迫る。

女は汗の垂れる己の額を手で押さえ、懊悩おうのうするように前髪をぐしゃりと握った。


「はぁ、、はぁ、、、ちっ何見てんだよ、クソやろうが」


およそ母とは思えない声で毒づく。


僕は襖から逃げるように、ぼろいアパートを飛び出した。



=======================



「すべての苦悩から解き放たれ、祝福を受けるべきは誰かな」


「それは孤独に祈る者だ」


「孤独?孤独がなんで必要なんだい?」


「群れれば弱い、惰弱は悪だ、悪は祝福されない」


「それでは幸福とは?」


「幸福もまた悪だ、ほとんどの幸福は幸福のために偽造された幸福だ」


「優しい者は?」


「優しさは驕り。驕りは悪ではないの?」


「こんな議論を俺たちは何百年しているのだろうか、これこそ悪だ」


「それでは、最も孤独な者と最も惰弱な者、それから最も幸福な者と最も優しい者、比べてみましょうよ」


「それがいい」


「そうしよう」




「、、、、あらゆる世界から」





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る