15日目

私は失った。この喪失感は誰にも何にも埋められるものではなかった。


それは一緒に過ごしていた日々よりもはるかに感じさせられていて、失ってこそわかる重さでもあった。






「夏世、大丈夫じゃないと思うけど大丈夫?」


目覚めると母がそばにいて私を心配しているようだった。


「陽さんは…犯人はどうなったの?」


「え?捕まって今度裁判にかけられるって言ってたわよ」


陽さんは悪くない。私だけが知っているのに。私が証言すれば少しは罪が軽くなるかも。


「刑事さんに私が証言してるから、犯人の人の罪を軽くしてって言って…!お願い」


「あなた、何をされたか分かっているの?何日も軟禁されていたのよ…」


母は泣きそうに私の手を握った。


違うのに、伝わらなかった。


「少し、1人にして…」


母は黙って私の部屋から出た。


いつもの部屋のはずなのに、なぜか慣れなくて、今は陽さんの温かさしか欲しくなかった。


あの日陽さんは「俺も好きだよ」と言った。


つまりいつからか両思いで、どことなくその雰囲気を出していたのか。


考えても考えても陽さんとの思い出だった。


そしてドアを開いた瞬間何をされたのか思い出してみた。


そうだ、キスされたのだ。


あの日、ドアは私が思ったより思いっきり開き、勢いがあまりすぎて後ろに倒れるかと思われた時、陽さんも私より早く勢いよく飛び出してきて、顔と顔が近づいたというわけだ。


陽さんの顔が近づいてきた時、もしかしたら意図的に少し顔を近づけて私にキスしてきたのかもと思った。


だから事故といえば事故だが、向こうの意図だったのかもしれない。でもそれらを全部抜きにして私たちはあの日初めてキスをしたのだった。


私はあの、時間が止まった時を思い出した瞬間、顔が熱くなって体が硬直した。


でも同時にもうそれはできないんだという事実にとてつもない寂しさと悲しさが襲ってきた。


私は布団に潜り、ぎゅっと目を瞑り現実から目を背けようと夢の中に入った。


どうか夢では陽さんと会えますようにと願いながら。


会いたい

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