4日目

私は恋が少しだけわかった気がした。何故みんなは恋をしたがるのか、彼氏が欲しいと言うのか。たとえその言っていた子が不純な動機だったとしてもきっと異性としか分かり合えない温かさがあるからだと思った。それだけはわかった。


でもきっと私たち2人には恋愛という関係は生まれない。私の一方通行だ。




「さて、今日は一体どんなくだらない質問をしてくるんだ?」


「くだらないは余計ですが、楽しみにしててくれて嬉しいです。」


陽さんとも冗談まじりで話せる友人くらいには打ち解けられたと自分の中で思う。


「実は決められなくて…」


あまりに陽さんに聞きたいことがあって一日一つという制限に悩まされていた。


「じゃあなんで昨日好きな食べ物なんか聞いたんだよ」


陽さんはカラッと笑う。素敵。


「じゃあ逆に初めましての人に好きなタイプは?って聞けないでしょ?なんとなくの相場じゃないですか。」


これは私が本当は聞きたい質問ランキング第2位。


「もうそれでいいじゃん。聞きたいこと。」


「え?!答えてくれるんですか!」


つい食い気味になる。


「ほぼなんでもって言ったのは俺だしな。別に…それくらいなら俺の素性にはならない。」


「じゃああの…好きなタイプはどんな人ですか。」


本当にこれが聞けると思わなかった。つい姿勢を正して改まる。でももしこれが私と真反対だったらどうしようと聞いた後に考えた。


心臓が高鳴る。


「そうだな…ギャルみたいな陽キャでアウトドアな子…」


あ。もうこれ私と真逆だ。絶望の淵。私は陽さんのタイプじゃない。気持ちは直角に落ちた。


「じゃない落ち着いた子がいいな。」


え!本当に!心は直角に上がった。流石に今の言葉を口に出すのはやめて、心の中というより口の中に留めた私は偉い。


「そうなんですね。ちょっとチャラいイメージがあったんで意外かもです。」


何を言っているんだ私!こんな私に刺さる言動一つで顔色ひとつ変えずにいられるのだけ褒める…!


私のなりたい関係にチャンスはまだある。心の中の掌はグーになりガッツポーズをしまくった。


「そうか?俺は元々家からあまり出ないし、人とつるむのが苦手でな。」


陽さんから自身のことを話してくれた。


「そうなんですね。私も友達なんていないのでよくわかるかもしれません。」


私と陽さんはなんとなく同じような境遇にいるのかもしれない。そう思ったらさっきとは違う胸の高鳴りがした。そして少しだけ共感し分かり合えたこの瞬間がたまらなく愛おしくなった。


理由はちょっとわからないけど、きっと陽さんといる温かさがそうさせているのかもしれない。


「お前こそ意外だな。友達そこそこ多そうなのに。」


「友達なんているだけ面倒です。…人との関係の分だけなんらかのすれ違いがありますから。」


「…そうだよな。」


さっきまでの明るさはどこかに消えて私の心音だけが聞こえる静かな空気になってしまった。でも何故だか喋らなくても言葉にならない何かを分かり合えている気がした。


「湿っぽい空気にさせて悪かったな。なんか食うか。」


「どうせいつものコンビニのパンでしょ?」


「どうせは余計だが期待しててくれて光栄。」


私はやれやれと半笑いになる。空気がいつもと同じ軽さになった。


「辛かったらその重さ俺に乗っけろよ。」


陽さんは私の頭を一回ポンっとした。






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