第2話:ピンク。
俺は買ったガイノイドを連れて店を出た。
で、改めて俺の横にいるガイノイドを見た。
うん・・・いい感じだ。
顔もいいし、体型もいいし、背も丁度いい。
人間でもここまで、ぴったりなタイプってなかなかいないよな。
「バス停まで歩くけどいいか?」
「うん・・」
「ところでおまえ・・・君、名前は?」
「名前・・・名前ね・・・前のオーナーがつけてくれたのがあったみたいだけど・・・忘れちゃった」
「ガイノイドだろ?そんなの一度覚えたら記憶してるだろ?」
「人間ならど忘れってこともあるだろうけど・・・」
「そんなことないよ・・・忘れる時だってあるよ」
「そう言うの、記憶のジャンプって言うんだよ」
「ふ〜ん・・・聞いたことないけどな」
「私の名前、あなたがつけてよ」
「俺が?・・・そうだな・・・名前がなくちゃ不便だもんな・・・」
「じゃ〜ジェシカってのどう?」
「なんで?・・・なんでジェシカがよかったの?」
「俺たち、今、道端にいるからな」
「・・・・・・・」
「真剣に考えてくれないと怒るよ、まじで」
「分かった・・・けど、そんなにすぐには・・・」
「あ、ピンク・・・ピックがいいわ、君の名前」
「なんで?」
「その髪だよ・・・ピンク」
「ああ〜なるほどね」
「決めたからな・・・君の名前は今からピンクだ、決まりっ」
俺はピンクを連れてバスに乗って電車に乗ってアパートに帰ってきた。
俺のアパートは身内以外、女の連れ込みは禁止。
だから管理人にも住人にもみつからないようそっとピンクを部屋に入れた。
「そこのソファにでも・・・もう座ってるし・・・」
「喉乾いたんだけど・・・飲み物もらっていい?」
そう言うとピンクは勝手に冷蔵庫の中からビール取り出した。
「これもらうね」
で、ビールを美味そうにグビグビ飲んだ。
「ぷっしゅ〜〜〜〜」
「ああ、うんま〜」
「自由すぎないか?」
「それにさ・・・なんで飲み物なんか飲んでるんだよ」
「ガイノイドのくせに、ビールなんか飲んだら体のメカが変になるぞ?」
「あのね、さっきから私のことガイノイド、ガイノイドって言ってるけど」
「私、ガイノイドじゃなくて、バイオロイドだからね」
「バ、バイオ?ロイド?」
「ガイノイドもバイオロイドも人造人間には違いないみたいだけど」
「でもガイノイドは機械だけど、私は人間と同じ有機体なんだって・・・
って聞いたけど・・・だから、飲み物も飲めるし、ご飯も食べられるの」
「排泄機能もちゃんとあるよ」
バイオロイドとは人間でもないロボットでもない、その類の中で一番新しい存在。
クローン技術を使った人造人間で遺伝子加工さているためネガティブな因子は
排除されているはずだが・・・。
「ああ・・・そうなんだ・・・俺はてっきりピンクはガイノイドだと思ってた」
「よく待ちがえられるから・・・平気」
「あの店にもたぶんガイノイドと間違われて一緒に引き取られたんだと思うし」
「そうか・・・間違われるってなんとなく切ないな」
「そうそうおニイさんの名前教えて?」
「ああ、俺か?俺は「切磋 拓磨 《せっさ たくま》」
俺はピンクに分かるようにメモに漢字で俺の名前を書いてやった。
「拓磨 《たくま》」ね・・・」
「あらためてお世話になるね、拓磨」
そう言うとピンクはまたビールを美味そうにぐびぐび飲み干した。
ピンクがガイノイドじゃないとして、これって金を払って買ったんだけど・・・
いいのか?
ガイノイドじゃないってことは?人ってことか?人を金で買ったってことか?
でもバイオロイドって厳密には人間じゃないんだよな・・・。
「だからいいんだよな」
ちょっと不安になったから、これは正しい行動なんだと自分に言い聞かせた。
でもって、ピンクは金で買ったけど俺の彼女。
ほぼほぼ聞いたことないパターンだけど・・・とりあえず欲しかった恋人が
できたわけだ。
ピンクはなんで俺んちに連れてこられたかピンと来てないかもしれないけど。
「もう一本もらっていい?」
「ああ、好きなだけ飲んでいいよ・・・これからは俺のものはピンクのもの、
ピンクのものは俺のもの」
つづく。
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