やっぱりクソゲーだ!!

第1話

 登場キャラクターは大体攻略できるゲーム「夏の終わりまで」。俺がやったゲームの中でも屈指のクソゲーで、精神的ストレスを常に感じながらプレイしていたゲームだ。キャラクターの容姿はいいし、種族や性格も多種多様で他のゲームと大差がなかったと思う。


 酷かったのはゲーム性。RPG式の癖に一度戦闘不能になったキャラは一から育てなおし。攻略対象が何故か勝手に動き回り、雑魚敵に殺されてゲームオーバー。やっと攻略出来るという寸前で国のピンチ!!国を救ってくれとかいうクエストが発生する。


 俺はプレイしながら思ったね。ホントにキャラを攻略させる気があるのかってね。それは他のプレイヤーも同じだったようでレビューには、まるでスパムみたいに同じことしか書かれていなかった。


 そんな屈指のクソゲーに、俺はザックという一キャラとして転生してしまった。  

 さて、突然だがここで転生した今の状況をお伝えしましょう。



 「ねぇ、ザック?ダメじゃない、私以外を見るなんて」


 なんとヒロインの一人、シャルロットに拘束されています!


 

 遡ること一週間前。


 「よっしゃー!ようやく、ようやくクリアだ」


 俺は自宅で「夏の終わりまで」をプレイしていた。クソゲーだと思ってはいるが、買った以上はクリアしたくなるのが俺という男だ。あと何気に高かったし……。


 さて、土日を丸々ゲームで潰したが、気持ちはとても晴れやかだった。もう、途中から仕事してる気分でプレイしてたから、解放されてスッキリしている。


 ふぅ。解放されたからか腹が減ってきた。コンビニに何か買いに行くか。

 財布とスマホだけ持って外に出て、コンビニに向かう。


 その道中で俺は謎の死を遂げた。事故ったとか、刺されたとかそういうのではない。突然意識が飛んで目が覚めて時には、この世界に来ていた。だから正確には死んだかもわからない。


 もちろん初めは戸惑った。けれど、段々とここがなんの世界なのかを理解するにつれ……さらに戸惑った。よりにもよって何で、あのクソゲーに何故という疑問で頭が埋め尽くされる。


 しかし、そんな疑問が一瞬で吹っ飛ぶ事態が起こった。俺が転生した場所。そこは攻略キャラの一人であるこの国の王子と女主人公が出会う場所だったようで、俺の目には、間違いなくその二人が談笑をしている姿が映ったからだ。


 それはつまり物語は既に始まっていて、尚且つ王子攻略とかいうクソゲー中のクソゲーの難易度を誇るルートに入ってしまっていることを示している。


 このルートはまず第一に国家転覆が起こる。唐突に王族が王子とその妹以外全員死ぬ。王子は復讐鬼になり、女主人公は王子に協力して主犯を探しつつ、王子の最後のストッパーになるというルート。このルートは悲惨の連続の一本道だ。そしてこのルート、王族殺害の犯人はまさかの王子の妹というオチで王子と女主人公は二人とも無惨に殺されてエンドロールだ。


 ストーリーは嫌いでもキャラは好きなので、どうにか助けてあげたいがこのルートに入っているということは、王子の妹シャルロットは既に闇堕ちしていることも確定と見ていいだろう。


 となると、このルートを防ぐためにはシャルロットに直接会いに行き、闇堕ちの原因を取り除くしかないだろう。そこまでの難易度が高すぎるんだけど、やらなきゃあの二人だけでなく普通に国が終わるので、俺も野垂れ死ぬかもしれない。それに折角ゲームの世界に入ったんだから、キャラを間近で見てみたい願望はある。


 ゲーム知識をフルに使って、まずはシャルロットに接触する。王子と女主人公の出会いがあったということは、あと半年で本編である学園に舞台が移るだろう。

 それまでにシャルロットを救い、力の使い方を教える、それでとりあえずは危機を脱して生き残れる。よし。そうと決まれば、まずやるべきことは一つ。直談判だ!!


 


 ということで王都最奥部にある城「セーゲル城」に中に来た。

 えっ!?どうやって入ったかって?バグ技を使っただけですよ。


 というのも、このゲームには公式公認のバグがいくつもあり、例えば壁抜けであったり、例えば経験値増幅バグであったりと、他にも様々なバグがあった。そのうちの一つ壁抜けを使ったのだ。


 やり方は簡単でひたすら一定の壁に体を擦り続ける、という何とも原始的なものだ。しかし、労力のわりに何かしらのアイテムを獲得したり、新たな攻略キャラが増えるなんてこともなく、使いどころが殆どないよねって技だった。それがまさか、転生初日から活きてくるとは思わなかった。


 しかし、問題はここからだ。なんとこのバグ技。内部からの使用が修正で不可能になってしまったのだ。そして入るほうが成功したので、バグ技はこの世界に適応されていると見ていいだろう。おそらくだが修正も適応されているはず、となるとここから安全に出るためには、シャルロットを説得するしかない。


 この後には引けない緊張感……大好きだ!!

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る