やわらかな亀裂

「女の子だから」

そう言われるのがイヤだった。

あとに続く言葉が、ぼくには受け入れられないものばかりだったから。


女の子だから、

おとなしくしてなさい。

スカートを履きなさい。

髪の毛は長くしなさい。


おしとやかに……

なんて言われた日には、

その場から走り出して 消えてしまいたくなった。



女の子だから、

女の子だから、


だったら、

女の子でなかったら、

自分でどこへでも行けるのだろうか。

好きな服を着れるのだろうか。

髪の毛だって短くしたい。


ぼくの望む姿は、

回りの望む姿とは正反対で。



けれども、ぼくは

今、

この女の子ばかりの学校の中で

少しだけ 自由を見つけた。

それが きみ。


きみは、

静かなように見えて 実は、おしゃべりで。

スカートがキライと、気が合って。

髪の長さは気にしていなかった。


男の子の出てくる本を好みながら、

実際の男は毛嫌いをして、近づこうともしなかった。

男達の友情をあついと熱を入れて語る割には、男性教師に興味はなかった。


ひとり、

無造作に束ねた髪をかきながら、

(この学校では)誰も読まなさそうな本に夢中になっていた。


気付くと、

ぼくときみは、一緒にいたね。


本当は スカートなんて履きたくないけど、制服だから仕方がないって。

ヒザを隠した長めの丈は、校則だからと きっちり守って。


脱色なんてとんでもない。

黒髪のきれいなきみだった。


薄い本を一緒に作って笑いあった あのひとときは

ぼくにとっての青春。


いびつなぼくと

きばつなきみが、

なぜだか妙に気が合って。


後輩達の入る隙間すらなかったのじゃないかな。



きみは きみの好きを曲げなかった。

だから、ぼくは きみのそばが心地良かったのかもしれない。









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