転生たぬきの異世界モフモフ暮らし ~転生たぬき合戦こんぽこ~
蛙田アメコ
第1話 ロードキル
たぬきは、びっくりしました。
その夜、たぬきはお散歩をしていたのです。
お月様はまんまるで、枯れ葉のあまい匂いをたっぷり含んだ秋の風が気持ちのいい夜でした。夜の匂いをクンクンしながら、歩いていました。
──あっちの町には、おいしいドングリがあるかしら。
人間の作った冷たい石の道。こんくりぃとの道路といいます。
その向こうの森が、いつもよりちょっとだけ気になってしまったのです。
このあいだの冬に死んだ父ちゃんも、行方知れずの母ちゃんも、この道は渡っちゃいかんと言っていました。
でも、たぬきはもう子だぬきではありません。大人たぬきです。
ちょっとだけなら、大丈夫。
たぬきは、勇敢にも歩きはじめました。
……いま思うと、親の言うことが正しかったのです。
こんくりぃとの道は、足の裏がひやっとしました。
ひんやりを楽しみながら歩いていると、向こうから眩しくて明るい何かが、ブーゥンと唸りながら走ってきました。たぬきのほうに。
ピカピカです。
眩しいです。
なにかしら、あれ。
ああ、あれは……そう、人間のまたがるオートバイ!
はやい、はやい。
オートバイは、かっこいいです。
おー、たぬきのほうに近づいてくる。
気がついたら、たぬきは吹っ飛ばされていました。
まぁるいお月様にむかって、吹っ飛ばされてました。
オートバイに乗ってた人間が「やべえ、なんか轢いた!」と嘆いてます。
たぬきは、オートバイに轢かれてしまったようです。
ああ、父ちゃんと母ちゃんが正しかったんだ。
最期にどんぐり、食べたかったなぁ。
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交通網の発達と森林開発により、交通事故や側溝へのはまりこみが原因による野生動物の死──通称「ロードキル」が増加しています。都心ではネコ、鳥類、そしてタヌキが被害にあっています。
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