ショッピングモールにて
百キロほど走り終わった後、大きな建物が現れた。ツタが至るところに生えており、元のものがどんなものだったのかわからない。広大な、砕けたアスファルトの多さから、なんらかの建物の駐車場だった場所へと車を止めた。
車のエンジンを切ると、急に世界がなくなってしまったのかのような錯覚を覚える。いいや、世界は終わっているか。
「広いなあ」
「そうだね」
短い返事をして、車に鍵をかけて、内部へと侵入していく。無数に広がっているツタを切り、壊れた自動ドアを通り抜けた。内部も無数のツタで覆われているが、外寄りかは幾分かマシでこの建物がなんだったのかわかるぐらいには少なかった。
自販機に、ショーケース、エスカレーター。きっとここはそこそこ大きなショッピングモールだったと思われる。ここなら何か食品を補充できるに違いない。消費期限が切れてなければいいが。
「結構きれいな状態じゃない?」
「いいね、期待できそう」
二人で顔を見合わせて笑う。
止まってしまったエスカレーターを降りていくと、電気が落ちているせいか何も見えないくらい暗い。ソーラーつきの懐中電灯で辺りを照らすと、久々の食品類とご対面した。缶詰もいくつかあって、消費期限を見てみればまだあと一年もつようだった。衣類やかばんコーナーにちょうどよさげなリュックがあったので、拝借していく。拝借したいくつかのリュックに、先程見つけた缶詰をこれでもかと詰め込んで、常温で置かれていた飲み物も詰め込んでいく。飲み物の方は、消費期限が切れていたが、ないよりかはマシだと思い、それも詰め込んだ。
二人でそれらを担いで、入り口付近に荷物を置いた。
「久々のショッピングモールだし、他のとこも見ようよ」
「……いいよ」
崩壊の危険性があるところを動き回るのは避けたかったが、誰でもない夜の提案だ、断れるはずがない。エスカレーターを慎重に昇っていく。
昇りきった先にあったのは映画館だった。ツタの生えた重厚感のある扉を開くと、無数の椅子と大きなスクリーンが見える。
夜はバッと走ると、一番手前の席の前に立った。
「すごいね!貸し切りだよ!」
いつもよりもテンションの高い夜はそうそう見られるものではないので、ついじっと見つめてしまった。見つめられて恥ずかしかったのか、それともテンションが高いのが恥ずかしかったのか、夜はくるりと背を向ける。
どちらにせよかわいすぎるので、スクリーン前まで走って行って、その顔をじっと見てみようとする。嫌なのか、絶対に顔を見せてはくれなかった。
次に見られた顔は、いつも通りのテンションだった、残念。
「さて、行こうか」
私たちは詰め込んだものたちを車に運んで、またどこかへと走り出した。
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