アナタヲ永遠二思ヒマス。

マリ

第1話 運命

桜が舞い散る穏やかな日に、二人は出会う。


1939年4月10日 東京

桜が舞い散る中、高坂鳴は明治神宮辺り散歩していた。その時急な突風に見舞われ鳴は帽子を飛ばされてしまった。


「あ!」


手を伸ばすが届かない。と、その時視界の隅から手が伸びてきて私の帽子をつかんだ。


「危ないところでしたね、お嬢様。」

彼は見るからに日本人ではなかった。金髪、青眼、白い肌。私は怖くなった。


「あ、りがとうございます。」


「いいえ、それよりもほかに飛ばされたものはありませんか?」


「いえ、ありません。」


「そうですか、それはよかった。では、僕はこれで。」

私は外国人が流暢に日本語を話していることに今気づいた。私はなぜか彼を呼び止めてしまった。彼に何かを魅せられて。


「あの!」


「?はい。」


「えっと、お名前は?」

彼は少し驚いたような顔をしてから顔を緩めた。


「アレンです。アレン・エイムズ」

私はつい聞いてしまった。


「どうしてエイムズさんは日本語がお上手なの?」


「それはここが好きだからです。日本はとても素晴らしい国だと思います。」

私は自分が褒められたかのような感覚がしてほほを赤く染めてしまった。


「ありがとうございます。私、あの、もう少しエイムズさんとお話がしたいです。」

私は勇気を振り絞って彼に言ってみた。私は本が好きでよく海外の本を読んでいた。いつかアメリカに行くのが夢だった。しかし、今の国際情勢を考えても日本からアメリカへ旅行なんてビザが下りないだろう。


「いいですよ。そこのベンチに座りましょう。」


「はい。」


そうして私たちは桜の木の下で長く語り合った。その時に知ったことがあった。アレンはアメリカ出身で私と同じ17歳。父の仕事で日本に来ることがありその時に日本の魅了に気づきそこから日本語を独学で勉強したらしい。今回は日本に来るのは3度目で少なくとも2か月は滞在する予定らしい。

気づいたら二時間も話し合っていた。話しているうちにお互いが心を開いていった。

「じゃあ鳴は音楽が好きなんだ。僕もピアノを弾けるんだよ。」


「すごい、聞いてみたい…。」


「じゃあ、僕の家に来てよ!ピアノを弾いてあげる。」


「でも、私…。」


「大丈夫。お父さんに今夜話しておくよ。また明日ここで12時頃に会えるかな?」


「うん。わかった。」


「また明日。」


「うん。」


そうして明日会う約束をして二人は別れた。

今日の出来事を私は家族にも友達にも言わなかった。理由は自分でもわからなかった。けど私だけの秘密にしておきたかった。

そして次の日12時頃に私は昨日と同じ場所に行った。アレンはベンチに腰掛けて本を読んでいた。


「やあ、こんにちは。」


「こんにちは。待たせちゃってごめんなさい。」


「大丈夫だよ。さっき来たばっかりだから。それよりお父さんが家に来て言いよって。」


「本当?大丈夫なの?私何にも持っていくものがない。」


「心配しなくても大丈夫だよ。僕が誘ったんだし。」


「じゃあ、お言葉に甘えておうちいってもいい?」


「もちろん、じゃあエスコートしますね。」


「ふふ、よろしくお願いします。アレン」

2人はたった一日だけでジョークも言い合える仲になっていた。

少し歩いていたら立派な豪邸が見えてきた。


「ここだよ、ようこそ僕の家へ歓迎するよ鳴。」


「ありがとう。とても立派な家…。」


「日本の家だけどアメリカ軍のものだよ、多分ね。いつか日本に自分の家をもって住みたいな。鳴はいいな、日本に住めて。」


「日本人だから日本に住めてるんだと思う。」


「いつか、国や人種が関係なく好きなところに行って好きな人と結婚して好きなところに住めるようになるといいな。」


「そうだね。」

私たちは玄関を通った。アレンのお父さんとお母さんが迎えてくれた。


「Hello, welcome to our house Mei!」

英語で出迎えてくれたのはアレンのお母さんで


「いらっしゃい鳴ようこそわが家へ。」

日本語で出迎えてくれたのはアレンのお父さんだった。アレンのお父さんは仕事柄で日本人とも話す機会があるため日本語を話すことができるが読むのと書くのはできないらしい。他国の言語を学ぶことはとても難しいことなのに私と同い年のアレンは日本語を話せている。本当にすごいと鳴は心から思い、アレンを尊敬した。

エイムズ一家は私を居間へ案内してくれてお茶とお菓子を出してくれた。そこで出たお菓子はカステラで私は一度も食べたことがなかった。


「すごい、カステラが食べれるなんて…。」


「鳴は食べたことがないの?」


「ないわ。甘いものはあまり買えないから。」


「そっか。いっぱいあるから好きなだけ食べていいよ。持ち帰ってもいいよ。」


「ありがとう。アレンは優しいんだね。」


「うん。」といい、アレンはそっぽを向いてしまった。アレンは耳と頬がほんのり赤くなっていた。


その夜、鳴はアレンのことが頭の中から離れなかった。

「アレンはいつまで日本にいられるのかしら…。もっとアレンと一緒にいたいな…。もっと、アレンのことを知りたい…。」


次の日、また同じ時間に約束をしていたわけではないが二人はその場所で会った。


「やあ、また会ったね鳴。」


「うん。会えてうれしい。」


「僕もだよ。きっと鳴なら来てくれるって、会えるって信じてた。」


「嬉しい。今日は何を読んでいるの?」


「今日はね、外国の本。英語だよ。」


「すごいね。日本語もできて英語もできるなんて。アレンはとっても頭がいいのね。」


「そんなことないよ。僕はただ興味のあることにしかまじめに取り組めないんだ。」


「そうなんだ。」


2人は他愛のない会話を毎日毎日同じ場所でしていた。時には海に行ったり、時にはカフェに行ってお茶をしたり、時にはアレンの家に行ってピアノを聴いたりした。気づいたら、お互いは互いに愛し合っていた。そして、出会ってちょうど1年でアレンが鳴に告白し晴れて恋人同士となった。それは、1940年4月10日の出来事だった。それから1年後までは二人は充実した生活を送っていた。しかし、1941年7月。2人は過酷な運命に引き裂かれてしまう。


1941年7月19日

この日も同じように公園で会い、アレンの家に行くことになった。しかし、いつもとアレンの様子が違った。重いものを背負っているかのような苦しそうな顔をしていた。鳴はアレンにどうしたのかと問うがアレンは何でもないの一点張り。アレンの家に着いたとき、アレンは唐突に話し始めた。日本とアメリカの関係を…。


「日本は今、戦争をしている。そして、それは全世界から批判を浴びている。アメリカはこれ以上日本を許さないと決めた。だから、経済制裁をしている。」


「急にどうしたの?」


「…。鳴のことは大好きだ。ずっと一緒にいたい。でも、父さんは明日アメリカに帰るって、昨日言ったんだ。」


「…そっか。そうだよね、アレンはアメリカ人だもの。このまま日本にいても意味がないわ。だって、日本は今戦争をしているもの。これは本当に悪いことだわ。みんなが許さないのもわかる。私だって一刻も戦争が終わってほしいってずっと願ってる。」


「ごめん。もっと早く言えていれば。もっと早く知れていれば。鳴が敵でも僕は君を愛している。だから、」


「忘れない。私はアレンのことを忘れない。戦争が終わったら会いに来て。私のことお嫁さんにしてくれる?」


「うん。もちろん。会いに行く!」


「ありがとう。絶対に死なないでね。私も生きるから。」


「うん、鳴も生きて、また会おう。」

2人は再会の約束をして別れた。


その5か月後、日本はアメリカに真珠湾攻撃をして太平洋戦争が幕を開けた。2人の運命の拍車は動き出した…。












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