不思議な暗闇を解き明かしてみたかった

那須茄子

第1話

 深い夜の端くれ。  


 私は夜更かしをしていた。

 夜という私にとっては、不思議な暗闇を解き明かしてみたかったから。


 ずっと皆が静かになるまで、寝ないように起きていた。


 


 


 午前一時。

 

 どうやら皆寝てしまったみたい。



 部屋を出て、階段をそっと降りて行くと。歩を進めた先々に、赤黒い影(?)がこびり付いている。

 進めば進むほど、夜が沈んでいく気がする。



 ふと、何かが弾ける音がした。

 聞いたことがない音だ。


 怖い。でも、確かめたい。なんだか凄く不安なのだ。


 引き返そうとする足を前に出す。


 恐る恐る、その音の方へ近づいていく。


 だんだん影(?)みたいなものも、大きくなる。



 色んな音が、色んなオトがする。


 誰かが待っている、そんな気がして。

 私は駆ける。


 早く早く確認して、寝てしまおう。

 思っていた以上に、夜はこんなに怖いのだ。


 



 ……音は、大広間からする。


 扉は開いている。

 私は足を踏み入れた。


 

 中は。

 暗い。


 中は。

 冷たい。


 中は。

 臭い汚い。


 中は。

 モノでいっぱい。



 

 暗すぎて見えない。暗すぎてよく見えない。


 何も見えない何も見えない何も見えない何も見えない何も知らない。

 

 何も何も何も何もなにもなにもなにもなにもなにもなにもなにもなにも見ていない。




 私は言い聞かせた。一人っきりは寂しいから、もう寝て明日が来て欲しかった。

 それでも、瞳は嫌というほど捉える。


 赤く染まる暗闇に。

 誰かがいる。


 見知らぬ誰かさん。

 誰かさんは、笑っている。

 誰かさんは、手に✖✖✖を持っている。

 誰かさんは、口で✖✖を啜っている。

 誰かさんは、✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖。



 誰かさんと目が合った。

 私のことも――したいらしい。


 

 あんなに――しておきながら、私までも。

 


 頭では理解しているはずが、逃げる意欲はまるで湧かない。

   



 ぼんやりと、迫る✖✖✖を見つめる。

 ただ待つことしかできない。


 そう。


 私の足はとっくに使いものにならないほど、折り曲がっていたから。








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