第11話 薬草畑の門
翌日も仕事、はいはい仕事仕事。
今日から三週間堪え抜けば、はれて異世界スローライフが待ってるんだ!
頑張ろう。
お母さんに朝昼晩と三食用意してもらえる影響は大きく。
会社オフィスで同僚から「金枝さん、彼女でも出来たんですか?」と聞かれるぐらいには影響あった。
「出来たか出来てないかで言えば、出来た」
「ですよね? お弁当はその彼女のですか?」
「いいや、彼女のお母さんが作ってくれてる」
「えぇー、それでも羨ましいなー」
ふふ、ちょっとした愉悦を味わえた。
◇ ◇ ◇
仕事を片付け、即座に帰宅する。
今日は珍しくコビーの姿がなかった。
代わりにお母さんがキッチンで料理していた。
お母さんように買ったエプロン姿がよく似合っている。
「おかえりリョウマくん」
「ただいまです、珍しくコビーがいませんね?」
「コビーだったら、主人が無理やり連れていっちゃってね」
「そうなんですね、しばらくしたら帰って来るんですか?」
「っていう話のはずだけど、あの人のことだから油断ならないかもねぇ」
ルウさん、奥さんからもすこし疑われてますやん。
「コビーはどこに連れていかれたんです?」
「ポーションを生成するために必要な薬草を三人で取りにいったよ」
三人、というのは貴族の少年サイくんも含まれているのか。
にしてもポーションとは、異世界らしくていいよな。
俺は実際にポーションと言うのがどんな代物なのか知らないし、興味わく。
しばらくすると、砂埃塗れになったコビーが帰って来た。
「リョウマお風呂借りるー」
「ああ、うん、お帰り。先にご飯頂いてる」
今日の晩御飯はお母さんたっての希望でホッケの干物を焼いた。
お母さんは魚屋さんとも仲良くなったらしく、今日は魚で、と約束したらしい。
ホッケの干物以外にも、しじみの味噌汁がついていて、疲れた体にしみる。
手短に食事をとりおえると、コビーもお風呂から上がって来た。
「薬草はとれたの?」
「え? とれなかったけど、なんで知ってるの?」
「お母さんから聞いた、ポーションに使うための薬草を三人でとりにいったって」
「今日は散々だったよ、薬草はとれないし、モンスターの群れに襲われるし」
ふぅーん……。
コビーに続き、ルウさんやサイくんも帰って来て。
今日も今日とて一家団欒の間でお母さんの料理を頂く。
薬草が取れなかったからか、ルウさんは昨日と違って無言だ。
「ルウさん、俺、ちょっと試してみたいことがあるんですけど」
「今は食事中だ、すまんが後にしてくれ」
俺が試してみたいこと、それは――薬草がいっぱい取れる門が作れないか試してみたい。行先まではばくぜんとしているけど、俺の中の力が叫んでいるんだ、俺に任せろって感じに。
ルウさんは食事中とのことで、家からちょっと外に出て、藍色の夜空の下に向かった。木の柵で覆われた農村の中には各家の前に火灯りがおかれている。全然違うんだけどさ、なんとなく日本の白川郷を思い出した。
俺は誰にも迷惑にならないと思った場所に、薬草が取れる門、と念じてポンと門を排出してみた結果。
「ポーション生成に使う薬草って言うのはこれであってますかルウさん」
「ぶ! リョウマっ、お前一体どこから薬草を取って来た?」
「この家の横に薬草がいっぱい取れる門を置いておきました、よかったら使ってください」
ルウさんは「なんだと?」と言いつつ席を荒げて外に向かった。
すると外で「馬鹿な! こんなのありえない!!」とルウさんが叫んでいる。
家の横に排出した門の先は水路がひかれた洞窟みたいな感じになっていて。
そこには両手に抱えている薬草の畑が広がっていたのだ。
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