第55話
「だからさ、ヒマリにはしばらくの間は神聖王国で頑張ってもらわないといけなくなると思うんだけど、それが落ち着いたらね。
またイシュレア王国に来るのもいいし、好きにして欲しいんだよね」
「サキさん……」
ヒマリが何やら感極まった顔でこっちを見ている。
私としても、ちょっと私らしくないなとか思ってたりするから、そんな目で見ないで欲しい。
どうしたら良いか、リアクションに困る。
「隊長が決められたのなら、我らとしてはそれに従うまでではありますが。
ですが、本当によろしいのですか?
これは明らかに我々に許される権限を越えていると思いますが」
まぁ、ヒギンスの心配もわかる。
なんせ、私達の任務はあくまでもクラリスの救出だからね。
ある程度荒事にはなるし、こちら側の関与を隠し通すのは無理だとは陛下には言ってあるし、それに関しては了承は得てるはずだ……たぶん。
でも、ここまで思い切り干渉することになることへの了承は得ていない。
たぶんあの話し合いの場で言ったら反対されるかなと思ったから言わなかったんだし。
「まぁ、帰ったら怒られるだろうねぇ」
「怒られるだけで済むとは思えませんが……。
隊長のお立場も悪くなりかねません」
「え……」
ヒギンスの言葉に、心配そうにこちらを見るヒマリの頭に、ぽんと手を乗せる。
わぁ、髪の毛サラサラだなこの子。
「大丈夫だよ。別に私の立場なんて元からあってないようなもんだし。
まぁ、何とかなるって」
あまりにもめんどくさいことになりそうなら、イシュレア王国から出奔しちゃえば良いだけの話。
それに、何となくだけど陛下はそこまで怒らない気がするんだよね。
今さらそれで怒るなら、最初から私達を神聖王国に向かわせてないだろうし。
「だから、ヒマリは後のことは心配しなくていいから、まずはクラリスを助けることだけ考えてたらいいよ。わかった?」
「はい……」
まだ少し不安そうではあるけど、一先ずヒマリは私の言葉に頷く。
「みんなもそれで良いよね?」
隊員一人一人の顔を見渡しながら確認をすれば、カレン、ジェイク、アレクは良い笑顔で頷く。
ヒギンスも、まだ言いたいことはありそうではあったけど頷いてくれた。
「さてと。
そうなると、じゃあ実際どうやってクラリスを助けつつヒマリを目立たせるかになるんだけど……。
ヒギンス、私の能力は全開で使う前提で良いんだけど、何か良い考えはある?
あ、フレバンとキースから今の神聖王国内の状況を聞いてからの方がいいかな?」
「ふむ……。そうですな。出来れば二人の報告を待ってから考えたいところではあります」
「やっぱりそうだよね。それじゃあ……」
「あの……」
実際の救出作戦の話を始めようとしたところでヒマリから声がかかる。
「ん?」
「あ、ごめんなさい、邪魔をしてしまって。
ただ、気になることがあって。いえ、ずっと気になってはいたんですけど、聞いても良いのかなって思ってて」
「いいよ。気になることがあるなら、何でも聞いて」
「えっと、あたし、サキさんの能力って何なのか全然知らなくて。
魔法……はたぶん使えないですよね?
それなら、あたしみたいな浄化能力とかなんでしょうか?」
あー、そう言えばヒマリに私の能力の話はしたことがなかったか。
それなら、いい機会だし話しておいてもいいかもね。
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