第51話

「サキ、それは……」


「わかってるよ。さすがに教皇一派を正面から相手するつもりはない。

でも、こうなったら穏便に済ませるのはたぶん無理だし、それならバレた時に面倒くさそうな奴をまとめて殺っておくしかないですよね?」


時間がかけられない以上、クラリスを助けるのは恐らく強行突入になる。

そうなると、こちらの身元がバレる可能性も高い。

だったら、バレた後に戦争を主導しそうな連中をまとめて排除して、神聖王国の首脳部を入れ替えてしまえばいい。

うん、我ながらなんてわかりやすい作戦。


「だが……。いや、クラリス嬢を助けるならそれしかないか……」


「そういうことです。

ヒギンス、急いで神聖王国まで最短ルートで出る準備を。

明日の朝イチで行くよ」


「かしこまりました」


「陛下、いいですよね?」


私の言葉に、陛下はしばらく難しい顔をして黙り込んでいたが、結局は頷いた。



「まぁ、そんなわけで明日は早くに出るから。

ヒマリもきちんと準備しておいてね?」


陛下からの了承を取り付けた後、いくつか必要事項の確認とお願いを済ませ、執務室を出た廊下でヒマリに声をかける。


時間がない以上、神聖王国までの道筋はどうしても強行軍になる。

少し可哀想な気もするけど、そこはヒマリにも頑張ってもらうしかない。


「わかりました。

でも、あの……。本当に大丈夫なんでしょうか?」


ヒマリが不安になるのもわかる。

そもそも、私は今回の作戦の肝になる部分をまだ誰にも話してないし。

でも、これが上手くいかないと恐らく教皇一派を排除しようが戦争になる。


あんまりこういうこと考えるのは得意じゃないし、私の仕事でもないんだけど。

まぁ、今回はたまたま思いついたし、これ以外方法がない気もするからいいか。


「大丈夫だよ。ちゃんと考えてるから。

まだ詳しくは言えないけどね。

ただ、ヒマリにもやって欲しいことがあるから、その時は協力してね」


なんと言っても、この作戦はぶっちゃけほぼヒマリ次第とも言える。

そこに至るまでの荒事の部分は何とでもなるだろうし何とかするけど、その後のことを考えるとね。


「わかりました。あたしに出来ることなら、なんでもします」


そう答えるヒマリの目には、強い意志が宿っている。

うん、この様子なら大丈夫そうかな。


「わかった。

じゃあ、今夜はゆっくり休むようにね。

明日の朝、迎えを寄越すから。

あぁ、アレクとジェイクはヒマリの仕度手伝ってあげて。

普通に旅に出るのとは違う部分もあるし、その辺は王城の侍女達も不慣れだろうから」


「了解っす!」


「お任せください」


「それじゃ、また明日ね」


さて、私も早く屋敷に戻ってゆっくり休むかな。

あ、その前に王妃様に顔だけ見せに行っておかないと。

しばらく王城には来れなくなるしね。

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