第48話
「あとは囚われているクラリス嬢がどうしているかだな。
枢機卿のご息女だと言うし、そう酷い扱いは受けていないと思いたいが」
陛下の口から出たクラリスの名前に、ヒマリがピクっと反応する。
「ねえ、ヒマリ。
ヒマリが最後に会った時、クラリス嬢はどんな様子だったかわかる?」
「えっと……。
あの日は、あたしが浄化の旅を終わらせたのをお祝いするパーティだったんです。
大神殿にはパーティの会場にするような場所はなかったんで、クラリス様のお父様とは別の枢機卿のお屋敷が会場になってました」
ヒマリの言葉に、地図を見ていた面々も顔を上げて注目している。
その視線には気付いているのかいないのか、ヒマリはとても真剣な顔で話を続ける。
「それで、あたしは教皇様達と一緒に入場するように言われてたんですけど、その場に普段ならいるはずのクラリス様がいなくて。
なんか変だなとは思ってたんですけど、皆さん気にしなくて良いって言ってて。
それで言われるままにパーティ会場に入ったら、突然ルシウス様がクラリス様との婚約破棄と、あたしとの婚約が決まったって言い始めたんです」
「え?それって、婚約の話は事前にヒマリには何もされてなかったの?」
「初耳でした」
まじかぁ……。
突然の婚約話だとは聞いてたけど、まさかヒマリに事前に何の話もなく勝手に発表するとか……。
思ってた以上にクズ野郎だな、そのルシウスってのと教皇。
「ねえ、陛下。
やっぱり教皇とその息子殺して……」
「やめてくれ、頼むから」
最後まで言わせてもらえなかった。
「なら、そこそこ痛め付けるくらいなら?」
「それも駄目だ」
「サキ殿。聖女様だけでなく、貴女も目立つのですから。くれぐれも神聖王国側には見つからないようにして頂かないと」
宰相まで反対してきやがった。
「それなら、いざとなったら私の事切り捨てて良いですよ。他所の国に行くだけなんで」
私が暴れたら国際問題になるなら、私はイシュレア王国とは関係ないことにしてしまえば良い。
それなら、腹の立つ連中に分からせてやる事も出来るし。
「そんなのダメです!!」
良い考えだと思ったのに、まさかのヒマリからダメ出しされた。
「この国には、サキさんを大切に思ってくれてる人がたくさんいるじゃないですか!
それなのに、そんなこと言ったら絶対ダメです!」
「…………わかったよ」
まぁ、私だってここで出会ったみんなのことは結構気に入ってるし。
ヒマリがそう言うなら我慢してあげてもいいかな。うん。
そうして慎重に作戦会議を進めていたが、数日後、先行して潜入していたフレバンとキースから届いた報告により、事態は急変することになる。
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