第46話
「そうです。隊長が常に我々の安全を第一に考えて作戦を立案してくださっているからこそ、皆がいつも無事に帰還出来るのですよ」
「それは私じゃないよ。作戦はいつもヒギンスが……」
アレクはこう言ってくれてるけど、作戦立案はいつもヒギンスだ。
私は、ヒギンスが考えて来た作戦を採用するかどうかを決めてるだけで……。
「副隊長が言ってましたよ。
隊長は、隊長の力で俺らを守れると判断した作戦じゃないと絶対に許可しないって」
そんなのは当たり前じゃない。
私はある程度の状況ならみんなを守れるし、それが私の仕事なんだから。
「サキさんっ!!」
その時、みんなどうしたのと固まっている私の視界の隅で、何か黒い物体がすごい勢いで近付いて来るのが見えた。
「わぁっ!?」
何事かと思えば、私の正面に座っていたはずのヒマリが、テーブルを飛び越えて抱き着いて来ていた。
「ちょっとヒマリ。いきなりどうしたの」
思わず大きな声が出ちゃったじゃないか。
「やっぱり、サキさん優しすぎます」
はい?
何を言ってるのこの子。
「私は優しくなんてないよ。
話聞いててわかったでしょ?
私は化け物……」
「化け物なんかじゃありません!!!」
私に抱き着いたまま、ヒマリが上目遣いで睨んで来る。
「皆さんサキさんに感謝してるじゃないですか。
それに、昨日だって初対面の私のことすごい案じてくれて。
そんな人が優しくないはずがないですよ。
だから、そんな悲しいこと言わないでください」
「ヒマリ……」
これはどうしたら良いの?
「お嬢様」
途方に暮れる私に、背後から優しい声がかかる。
「アーシャ……」
「良かったですね。皆様がきちんとお嬢様のことを見ていてくださって。
アーシャはとても嬉しく思います」
その言葉に周りを見渡すと、何故かみんなしてすごく優しい顔をして私を見ている。
その慣れない視線が、こそばゆくて変な感じ。
「これはもう、あたしも絶対神聖王国に行くしかないと思うんです」
「ヒマリ?何言ってんの?」
昨日あれだけ止めたのに、まだ言うかこの子は。
「だって、サキさんがまた辛い目に遭うかもしれないのに、あたしだけここで待ってるなんてできる訳ないじゃないですか!」
「でも、本当に危ないから……」
「隊長」
何とかヒマリを思いとどまらせようとする私に、ジェイクの声がかかる。
「もうこれ、聖女様絶対に折れませんよ?
無理に止めようとしたら黙って付いてきそうですもん。
俺とアレクさんでしっかり守るんで、ここは隊長が折れるしかないんじゃありません?」
ジェイクの隣では、アレクも仕方がないと言うように苦笑いを浮かべている。
なんでこうなってしまったのか。
全然わからないけど、どうやら私にはもう断るという選択肢は残されていないことだけはよくわかった。
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