第37話
「それで陛下?
そのクラリスって子を助けたとしてですよ。
その後はどうするんです?」
助けるの自体は穏便に済ませるとしても、問題はその後だ。
穏便に済ませると約束してしまった以上、教皇もルシウスってやつも神官達も「なるべく」殺さないようにする。
それはもういい。
でも、助けたからそれで全て良しとなるほど単純な話でもないだろう。
なんせ、相手は仮にも時期教皇の婚約者だった子な訳だし。
それに、聖女がうちの国にいるのもどう言い訳するつもりなのか。
その辺次第で私達の動きも変わって来るから確認しておかないといけない。
まぁ、何度も言うけど作戦考えるのはヒギンスだけどね。
「サキ達には、秘密裏に神聖王国に潜入し、クラリス嬢を救出してもらいたい。
救出後は、速やかに神聖王国から脱出し、我が国に連れ帰ってくれ。
その後のことはこちらで何とかする」
「そうですか」
うん、そうだよね。
たぶん連れ帰って来たあとはクラリスって子にはこっちで適当な身分を作って別人として生きてもらうとかそうなるはずだ。
「あの……」
私と陛下のやり取りを黙って聞いていた聖女がおもむろに口を開く。
「聖女殿。どうされた?」
「えっと……」
聖女はしばらく迷ったように口を開きかけては閉じたりを繰り返していたが、やがて意を決したように顔を上げる。
「あたしも連れて行っては貰えないでしょうか?」
「聖女殿。それは……」
まさかの聖女の言葉に、陛下が困ったような顔をしている。
クラリスにはお世話になったらしいから、自分も何かしたいって気持ちはわからない訳じゃないけど……。
「あのね、聖女さん。
こっそり神聖王国に潜入して、神殿に捕まってる子をバレないように助けて連れ帰るってそんなに簡単なことじゃないよ?
それはわかってる?」
私は山での生活や近衛騎士団に入ってからの任務で隠密行動にはそれなりに慣れている。
うちの隊員達なんて言わずもがな。その道のプロばっかりだ。
でも、聖女は違う。
その辺に関しては完全に素人だろうし、何より顔を確実に知られている。
はっきり言って邪魔にしかならない。
そう告げる私に、聖女は泣きそうに顔を歪める。
「もちろん、それはわかってるんです。
でも、クラリス様が大変な時にあたしだけ安全なところで何もしないでいるなんて……」
「じゃあ、質問を変えるよ。
穏便に済ませるとは言ったけど、それはあくまでも私の中では努力目標でしかない。
主目的はクラリスって子を助けること。
そのために必要だと判断したら、私は遠慮なく神殿にいる連中を殺す。
貴女にその覚悟はある?」
「それは……」
私の言葉に聖女は絶句し、陛下は困った顔をしている。
でも、これは本音だ。
約束した以上無駄に殺すつもりはないけど、目的の為に必要なら迷ったり躊躇ったりすることは絶対ない。
それは私だけじゃなくて隊員達にしても同じだと思う。
だから、同じ覚悟がない人を一緒には連れていけない。
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