第26話

そうして場所を変え、ここは王城の地下にある秘密のお部屋。


まぁ、私の職場でもある拷問部屋ってやつね。


あ、地下にある拷問部屋って言っても、部屋そのものは割と綺麗にされている。

もちろん、任務のすぐ後とかは血とか色んなもので汚れるけど、うちの隊員達が後片付けしてるし、王城の使用人とか誰かしらが掃除もしてくれるしね。


やっぱり、いくら仕事とは言え汚いところではやりたくないもんね。


「伯爵と娘さんはさっきぶり。

奥さんとは初めましてかな?」


今、私の目の前には三人の人物が拘束された状態で椅子に座らされている。

ノートマン伯爵とその奥さんの伯爵夫人。

あと娘でノートマン伯爵令嬢のレミアね。


笑顔の私と、その後ろに控えている無表情の近衛特別部隊の面々。

これって、捕まってる側から見たらやっぱり怖いのかな?


伯爵は顔色を失ったまま俯いてるし、夫人とレミアは目に涙を浮かべてガタガタと震えてるもんね。

私は笑顔だから怖くないはずなんだけどなぁ。


やっぱり、私の笑顔が優しさからじゃなくて、これからのことを考えて楽しくて笑ってるのが伝わってるからなのかな?

いや、そもそも笑顔のつもりがいつも通りの無表情のままとか?

相変わらず表情筋が仕事してない可能性は高いかな。

まぁどうでもいいや。


「ねぇ、伯爵?

私さ、伯爵になんか恨まれるようなことしたかな?

まさか公爵の仇とか言わないよね?」


「私は何も知らん……」


やっぱりいきなり素直には話さないよね。

うんうん、わかってるよ。

公爵はついに先日処刑されたけど、伯爵は対外的には公爵の派閥には属してないことになってるもんね。


「そうは言うけど、伯爵のとこの使用人は伯爵に指示されたって言ってるんだけどね?

あ、もしかして伯爵じゃなくて奥さんの指示?

それとも娘さん?」


「わ、わたくしは何も知りません!!本当です!!」


「わ、わた、私は……」


必死に否定する夫人と、震えてしまって言葉にならないレミア。

うん、そうだろうね、たぶんこの二人は無関係なんだろうなぁ。


これまでたくさん拷問して来たからか、何となくここに連れられて来た時の雰囲気でその辺わかるんだよね。


「そうなの?

でも伯爵が何も知らないって言うなら、二人なんじゃない?

すっごく不味いんだよこれ?」


そう言って伯爵一家によく見えるように小さな小瓶を見せる。

中身はもちろん、私が飲まされた毒入りワインだ。

成分分析にも回したりしてるから、残りは少ししかないけどね。


「ちょっと奥さんと娘さんも飲んでみる?

そしたらどんだけ不味いかよくわかるから。

あぁ、大丈夫だよ。二人とも『絶対に死なない』から」


「ひっ!」


「や、やめて……!」


「ほーら、残り少ないのに零れちゃうから。

『動かないで黙って口開けて』ね?」


涙や鼻水でぐちゃぐちゃになっている二人の口を開けさせ、そこに向けてゆっくりと小瓶を傾けていく。

相当苦しいだろうけど死なないから問題ないでしょ。


「ま、待ってくれ!!」


今にも夫人の口に毒入りワインが注がれようとした時、それまで黙っていた伯爵が大きな声をあげた。

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