第9話
「お待たせ」
私が部屋に入ると、ソファに座っていた金髪の女の子がビクッと肩を震わせる。
「あぁ、そのままでいいよ」
慌てて立ち上がろうとするのを片手で制すると、私は女の子の向かい側に座る。
部屋に待機していたメイドがお茶を用意してくれるので、この子にも用意してくれるように頼む。
「えーと、元公爵令嬢のレイシア・アーセルで間違いない?」
アーシャから渡された書類をチラリと見ながら女の子に確認する。
「は、はい……」
私の言葉に、メイドをチラチラと見ていた女の子が顔を上げる。
「昨日よりは顔色良くなってるね。コレならすぐ働けるかな?」
「働く……のですか?」
私の言葉にレイシア、昨日王城の拷問部屋で、実の兄が拷問される様を見せ付けられて泣き叫んでいた少女が恐る恐るというように口を開く。
見事だった縦ロールもなくなり、厚めだった化粧も落として素顔になったレイシアは、確か16歳だっけ?
歳相応という感じに見えて、今の方が可愛いと思う。
「そう。貴女は今日からここで使用人として働いてもらう。
それが嫌なら兄の後を追わせてあげるけど、どっちがいい?」
「ひっ……」
私の言葉の意味はさすがにわかるのだろう。
レイシアが小さく悲鳴をあげる。
まぁ、実際にはまだ公爵は取調べ中で生きているだろうけど、処刑は確定だしね。
「あ、そうそう。
他の使用人の目とか気になるかもしれないけど、それは気にしなくていいよ?
みんな貴女と同じような境遇の子ばっかりだから」
脅えているレイシアに軽い調子で告げる。
「さっきお茶用意してくれた子。知ってるでしょ?」
「その……わたくしの見間違いでなければ、エンメル伯爵令嬢に見えたのですが……」
「うん、そう。
まぁ、正確には元伯爵令嬢だけどね」
「彼女は亡くなったものだとばかり……」
「ここで生きてるよ?今のところはね」
私の今のところはという言葉に、レイシアが再び脅えている。
いずれは殺そうとしてると思ったかな?
あの子は元の性格も真面目だし、変に怯えることもなくすごい良く働いてくれてるから、そんなつもりは全くないけど。
アーシャからも、私の専属に取り立てても良いかもしれないって言われてるくらいだもん。
まぁ、そう思うならそれはそれで良いんだけど、脅えてばかりで仕事にならないのも困るから、一応訂正してあげることにした。
「普通に働いてれば殺さないよ、あの子も貴女もね。
まぁ、もしも私に敵意を向けてくるなら即殺すけどさ」
「は、はい……」
既にメイドとして働いているエンメル元伯爵令嬢や新しく働くことになるレイシア。
そしてアーシャと執事長以外の使用人。
その全員が、何らかの罪を犯し、私が拷問したり暗殺したりした貴族の子息や令嬢だ。
人数は少ないけど元夫人もいる。
夫人が少ない理由は、大抵が夫と共謀していて同じ末路を迎えているから。
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