第4話

今なら少しわかる。


国王様も王妃様も優しくて立派な人だと思うけど、この国はまだ大きな戦が終わったばかり。


立派な為政者がいても、その恩恵が下々まで届くにはまだ時間がかかり、国民の大多数は余裕がない暮らしをしている。


戦で住む村や街を失って盗賊に身を落とした者も大勢いる。

他人を騙してでも生活の糧を得ないと、明日食べる物すらない人だって大勢いる。


私を襲った盗賊達や、騙そうとして来た村人達もきっとそうなんだろう。


でもね?

だけどね?


それがどうしたって言うの?


そんなのは私が搾取される理由にはならない。


私から奪おうと言うのなら、私が先に奪ってやる。


私を殺そうと言うのなら、私が先に殺してやる。


もう逃げない。

何度も襲われ、騙されかけた末にそう決めた時。

きっと私の心は死んだ。


襲われる前に逆に盗賊を襲っては食料や生活に必要なものを奪った。

さすがに人里を襲うことはしなかったけど、それも良心からじゃない。

それが原因で追っ手が付いたらめんどくさいからだ。


そうして盗賊だか山賊だかのような暮らしをして一年が過ぎた頃。

あのインテリイケメンが現れた。


その日も、私は盗賊達の隠れ家を見つけては盗賊を皆殺しにし、処理がめんどくさいから死体はそのままに中を物色していた。


「黒髪の少女を見掛けたという情報は本当だったのか……」


私を見て驚いたように呟くそいつの後ろには、たくさんの兵士の姿も見えた。


「動くな」


私を捕まえに来たのか。

そう判断した私は、兵士達の動きを止めると、すぐにその場を離れようとした。


「ま、待ってくれ!」


そんな私に、慌てたように声を掛けて来たインテリイケメン。


「……なに?」


「君は『流れ人』だろう?我々は君を保護しに来たんだ」


「流れ人?」


その時の私は、相当荒んだ目をしていたと思う。

まぁ、今もかもだけど。

それにずっと森や山で過ごしていたから汚れていたし、盗賊の返り血だって浴びていて酷い有り様だったはずだ。


それでも、そんなことは気にした様子もなく、インテリイケメンは『流れ人』とは何かを教えてくれた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る