第4話『死者からの手紙』【怖さ★★☆】
「ある住所に手紙を送ると『死者』から手紙が返ってくるらしいぞ!」
ガキ大将の男の子が偉そうに話す。
「44丁目44番地44-44ですよね。精霊神が住んでいるという天国の住所。お前、父ちゃんいないよな!書いて見ろよ!」
手下の男の子が、いじめられっこに言う。
「ええ……ボク?」
戸惑う男の子。
「書けって言ってるだろ!殴るぞ!」
「わ、わかったから!書くよ!」
ガキ大将が拳を振り上げ、いじめられっこは両手で顔を守りながら叫ぶ。
「へへへ、ほら、紙と筆だ」
手下の男の子がいじめられっこに紙と筆を渡す。
ボクは嫌々手紙を書いた。でも、ボクが生まれてすぐに魔物に殺された父ちゃんと手紙のやり取りが出来ると思うと胸が弾んだ。
「……父ちゃんへ。44丁目44番地44-44……と、書けた!!」
汚い字だけど、うまく書けたぞ!
「よし!配達ボックスに入れようぜ!」
ボク達3人は村の外れの配達ボックスへと急いだ。
配達ボックスのたどり着くと、すでに配達員が立っていた。
「あ、あの!この手紙を出したいんだ!」
ボクが配達員へ手紙を差し出すと、配達員は手紙を受け取らず、ぶら下げていたカバンから1通の手紙を取り出し、ボクに渡す。
「……君に」
配達員は一言だけそう言うと去っていった。
「お、おい!その貰った手紙の住所、44丁目44番地44-44って書いてあるぞ!!」
手下の男の子がボクが貰った手紙を覗き込み驚く。
ボクが貰った手紙をガキ大将が取り上げる。
「貸せ!本当だ!差出人の住所が44丁目44番地44-44って書いてある!こいつの父ちゃんからの手紙かな!?読んでみようぜ!!」
ビリビリビリ……。
ガキ大将は手紙が入った封筒を乱暴に破り、中に入っていた折り畳んであった紙を広げる。
そこには、こう、書かれていた――。
『痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!地獄で待ってる』
「ぎゃぁ――!!!!!!!!」
怪談小屋に今日も悲鳴が響き渡る。
「は~い。今日はここまで~。さっさと帰ってくれよ~」
俺はいつものように、さっさと客を追い出す。
「ねぇねぇマスキ~地獄って魔界にあるの?」
子供が無邪気に尋ねてくる。
「はいはい、魔界の44丁目が地獄だよ。さ、帰った帰った!」
俺は適当に答えながら子供達を出口へと追いやる。
「ふぅ~。やっぱり一人が落ち着く」
全員、追い出し、お茶を啜って一息つく。
「あれ?そういえば今日はあの子、来てなかったな……」
昨日、フローラが落とした手帳を手に取り、眺める。
「申し訳ないが、少し中を覗かせてもらったが、住所は書いてないな……。今日の予定は……『演習場で稽古』と書いてある。女の子でも剣の稽古でもするのだろうか?」
俺は少しの間、その可愛らしい手帳を眺めていた――。
【演習場】
「団長殿!遅かったですな!ガハハ!!」
「オヤジーノ副団長!私は今日は休むと言ったであろうが!何度も呼びに来させおって!」
「おやおや剣聖様とあろう方がズル休みですかい?感心しませんなぁ~」
ガタイのいいオヤジーノ副団長は自慢の髭を触りながらニヤニヤする。
実力主義のギオン騎士団だが、どうも彼は私のことを下に見ている節がある。
まぁ、女の私が剣聖の称号を授かったんだ。仕方あるまい。
「いいから、さっさと剣をよこせ!見本を見せてやる」
私は団員からなまくらの剣を受け取ると、藁を束ねた巻藁の前に立つ。
「ふぅ――」
一呼吸置く。
辺りの空気が張りつめるのがわかる。
「やぁ!!」
ズバァン!!
巻藁が真っ二つに割れた!
『おお~!!』
団員達から拍手を浴びる。
「ガハハ!さすがですな!団長、今しがた我が演習場に男が手帳を届けに来たのだが、これはお主の物ではないのか?」
オヤジーノ副団長は見覚えのある手帳を私に見せる。
「!?わ、私のだ!!」
私はすぐに手帳を奪い取る。
「これをどこで拾った!?」
「だから、『男が手帳を届けに来た』と言うたであろうが……。ほれ、あの男だ」
オヤジーノが差した指の先に見覚えのある男が立っていた。
「いや~フローラさん、剣術お上手ですね!剣聖みたいでしたよ!!」
こちらにパチパチパチと拍手をするその姿は……。
「マスキ……さん!?」
私の顔がどんどん高揚していくのがわかる。
「……ええ?そうですが」
マスキはキョトンとする。
「ふふふ……ふふふふふ」
私は自分でも不気味だとわかる笑い声を上げた。
「おや?どうした?」
オヤジーノが不思議そうに私の顔を覗き込む。
私は棚に飾ってあった宝剣『フラガラッハ』を手にすると、勢いよくマスキに向かって剣を振った。
「あなたを殺して、私も死ぬ――!!」
「え――!!?なんで――!!?」
マスキが驚く。
「わぁ――!!団長を止めろ――!!」
止めに入る団員をなぎ倒しながらマスキに向かう。複数の団長に覆い被され、あと一歩というところで力尽きる。
「ころ……ころす……」
バタン!
「なんだってんだ?いったい……」
薄れゆく意識の中で、オヤジーノが面倒臭そうに呟いたのだけは覚えている――。
<つづく!>
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