オカエリ、サカムケ

サクラ堂本舗いまい あり 猫部(ΦωΦ)

サカムケ?

 キョウコは久しぶりに故郷に帰ってきた。

1人暮らしを始めて6年。久しぶりの帰郷だ。


懐かしい公園のベンチに座って空を仰いだ。

空は青く広い。自然の雄大さを肌で感じてた。


ふと右手に痛みを感じて見みると『ささくれ』が出来ていた。

ささくれを見ると小学校3年生の時に出会った転校生コウ君を思い出す。


コウ君は転校慣れしていて、すぐにクラスの仲間と打ち解けていた。

内気なキョウコは少し羨ましい気持ちでそれを見ていた。


「痛っ!」

キョウコの右手の人差し指に『ささくれ』が出来ていた。


その声に反応してコウ君が近づいて右手のささくれに注目した。

「うわぁ『さかむけ』出来てる!これ痛いやろ?」

「さかむけ?」

「そう、これな僕のおったところでは『さかむけ』って言うねん。」


いきなり言われて驚いているキョウコに

「これな引っ張ったら、もっと痛いで!」

と言って私の指のささくれを引っ張った。


「いたーーーい!痛すぎる!やめてよ!」

涙目で主張したらコウ君はばつが悪そうに

「ゴメン、ゴメン!」

と言って去って行った。

指先と心の痛みで泣きたくなった。

その年の3学期コウ君はまた転校していった。


数か月後、コウ君から手紙がきた。


「あの時は痛い思いさせてごめんな。

でもな、実は…僕キョウコのこと好きやってん。

ごめんな。今度会えたらちゃんと告白するから待っててな。」


えっ…?コウ君は私が好きだったの?

そういえば困った時には必ずと言っていい程コウ君がいた。


飼い犬の首輪を落として泣いていた時は夜遅く見つかるまで一緒に探してくれたし

他の男子にからかわれている時は前に立ってかばってくれた。


キョウコの淡い初恋だった。


「でもあの手紙…。何が告白よ。もう二度と会えるはずがないのにね…」


「そんなことないで!」

独り言に返事が来た。

前を見るとイケメンが立っている。


「…コ…ウ君…?」


「そうやで!告白するために戻ってきたんや。」

そう言ってコウ君はさかむけを引っ張り始めた。

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オカエリ、サカムケ サクラ堂本舗いまい あり 猫部(ΦωΦ) @hinaiori

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