4日前

 僕は彼女を呼び出した。

「どうしたの?」

どう切り出そうか考え倦ねいている僕に、彼女は首を傾げる。僕は手を彼女の両肩にかけて、言葉を吹き出す。

「どうか、落ち着いて聞いて欲しいんだ」

真剣な面持ちの僕に、彼女は噴き出した。

「私は落ち着いてるよ?そっちが落ち着きなよ」

確かにそうだ。重大な話をする前に、僕自身が落ち着かないと。


 ふーっと息を吐き、心を落ち着かせる。

「4日後、隕石が落ちてくるんだ」

「はいっ?」

彼女はキョトンとしている。そりゃ、急にそんなことを言われたら、僕もそうなると思う。

「だから、一緒に逃げてほしい」

ただ、話の腰を折られそうだったから、勢いで一番言いたかったことを言い放った。


 うん、と一つ返事を期待していた。しかし、彼女のそれは違った。

「で、お父さんやお母さんは?友達は?私たちだけ逃げるの?」

「それは……限られた大切な人にしか口外してはいけない決まりで……」

「私たちだけ助かって、どうするの?」

彼女の言葉に返す言葉もなかった。


 彼女は悲しそうな顔で続ける。

「大切な人に選んでくれたことは嬉しいよ。でも、なんか違う気がする。育ててくれた両親や友達、その他にも色々な人に支えられて生きてるんだよ。それを蔑ろにして、私たちだけ助かるのって、どうなのかなって」

確かに、彼女の言う事はただしい。

でも……

でも……

「じゃあ、どうしろって言うんだよっ」

僕は居た堪れなくて、その場から逃げ出してしまった。

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