世話焼いてくれる幼馴染兼恋人は最高過ぎます

鋼音 鉄

世話焼き恋人

「いた……っ」


季節は十二月。寒い冷風がひこに当たる。寒い風はあまり得意では無い為、手を擦っていた。首に巻かれているマフラーの上にある口から息を吐き、手を温めていた。寒さを緩和する為にしていた事なのだが、突如として小さな痛みが彦を襲う。


右手の人差し指を確認すると、【ささくれ】が立っていた。冬になると、毎回此方を不愉快な気分にさせてくる。これ以上チクチクとした痛みは感じたく無い為、他の指で強制的に【ささくれ】を抜こうとする。しかし、その行動は恋人であり、幼馴染であるすずが止めたのだ。


「痛いなら強制的に抜いたらもっと駄目だよ。【ささくれ】ってのはゴリ押しで抜くと、更に痛い目を見るから。もしそれでも気になるんだったら、私の家に来なよ。母親が乾燥しやすい体質でね、【ささくれ】を対処する道具が揃ってるんだ」


だからめっ、だよ?と可愛らしく注意をしてくる鈴に、毎回の事ながら心の中で悶える。鈴は誰が見ても美少女と言える面をしており、性格も良いのだから最強も良いところだ。彦を侮辱されたり、罵倒されたりしてしまうと、怒りのボルテージが突き抜けてしまうのは玉に瑕であるが。


まあ、彼氏としては、罵倒された時は自分以上に怒ってくれるのは嬉しくある。それと同時に、窘めるのが大変なので、大変ではあるのだが。彦はあまり思い出したく無い記憶を思い出しながら、鈴の家に向かっていく。







「よし、これで対処は完璧だよ。また【ささくれ】が出てきたら呼んでね?いつも彦には世話になってるし、苦しんでいるのは見たく無いから」

「分かった、頼る事にするよ」


彦は鈴の手を取り、そう誓う。約束の言葉に、鈴は上機嫌になっていた。何とも分かりやすい態度だ、と感じながら彦も気分を向上させていた。彼女が喜んでくれると嬉しいからだ。更なる誓いの行動として、彦が持っている手の中指にキスをする。


リップ音を鳴らすだけの軽いキス。けれども、鈴には十分恥ずかしかったようで、顔を真っ赤に染めていた。その表情に可愛い、と感じながら手を包む。


「うぅ……指にキスをされるの、恥ずかしかった」

「本当、恥ずかしがり屋だね。そういう所と可愛いんだけど」

「生まれながらの性質だし……何でジリジリと近づいてきてるの?」

「甘やかされたいなって」

「昨日も散々したと思うんだけど。まあ、私は構わないよ」

「それじゃあ、遠慮なく」


包んでいた手を離し、抱きつく。顔を鈴木の首筋辺りに移動をし、薄いシャンプーの匂いを鼻一杯に嗅ぐ。その行動に鈴は引く事など無く、全てを受け入れていた。





【ささくれ】の話は此処で終わり。また何処かの物語、【恋人】の物語であれば、二人と再び出会えるだろう。

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