第4話 記憶の中だけの味

 忘れられない思い出の味、ありませんか?


 前回の卵焼きに続いて、もうひとつ

 懐かしい味について、書いてみます。

 記憶の中だけにあって、もう食べることのできないもの…。


 夏休み。東北地方の父の生家に遊びに行ったときのことです。


 畑でもいだトマトやキュウリ、茹でたてのとうもろこし(トウキビと言ってました)。

 今、思えば、まるでトトロの世界そのものです。


 それから、祖母がおやつに作ってくれた牛乳寒天(牛乳と缶みかんを固めた物)と卵寒天(溶き卵を固めた物)。


 あの夏の日の日差しとともに思い出します。


 祖母も叔父も叔母も他界して、古い土間や五右衛門風呂があったあの家は、建て替えたために今はもう無くなってしまいました…。


 記憶の中の味そのものは、もう思い出せないけれど、美味しかった!という想いだけが残っています。


 きっと食事には何を食べたか、だけではないのでしょう。

 


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