転生
第一話 は・じ・め・ての殺人
——ガヤガヤ
そこは泥レンガ作りの家々が立ち並ぶ大通りであった。
皆一貫して白くひらひらとした服や紋様が入った服を身体中に
道の両端には
そんな群衆の中、ある青年が白ひげを生やした商人と行ってるのは言い争い、もとい交渉。
「おいおいそりゃないぜ爺さん!頼むよ!そこをなんとかしてくんねぇかな!」
「これ以上安くなるわけねぇだろガキ!30分も粘りやがって!諦めろ!」
青年が頼み込むも手に3枚の干し肉を握った商人はそう
「...はぁしゃーないなぁ。分かったよホレ」チャリ
と青年は軽くため息をつきポケットから何枚かの銀貨を引っ張り出した。それから商人に乱雑に渡すと、彼は干し肉を素早く受け取りそそくさと去っていった。
「二度と来んなクソガキ!」
そんな青年の背中に大声で
「(えーっと?これが931リルだから?あと残ってるのは………1387ね。へへへっこりゃ儲けもんだ。これでアイツの薬代は...)っと!」ドン!
だがその時、前にいた何かに気づかず打ち当たり衝撃で後方に大きく
彼が反射的に前を見ると奇怪な格好をした男がそこには居た。
白めの肌をした黒髪黒目、ここでは見ない人間だ。外の国から来た奴だろうか、物珍しい。さらにその体は青年よりも一回り小さく、それでもまるで体勢を崩してないことに我が目を疑った。
けれど一番気になるのは彼の目がとても
その黒い目と合わさり凝視すれば深淵に囚われてしまいそうである。彼はそれから逃れるために一言言って逃れようとする。
「す、すまんね」
——グスッ!
「………は?」
突然、それはあまりにも唐突なこと。
——彼の
それも凶器ではなく素手に。
「な!、、ゔぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
青年は口と傷口から多量の出血を起こしながら痛みに耐えかね絶叫を上げる。顔は歪み額から脂汗がブワッと出た。
「っっキャアアアアア!」
これには周りも悲鳴を上げるしかない。皆その信じ難い光景に見入るように注視し、体を引いていた。
「お、お、お、ぉえぇぉぇ!」
傷は深い。横隔膜と周辺臓器が完全にやられた。
生き残る確率は……限りなく、極限に0に近しい。
彼は弱々しく男の腕を
死を受け入れるのには余りにも酷な歳。
しかし、無慈悲にも意識は霧散していく。
そんな死にゆく意識の中、今の自分ではなく誰かのことを想っていた。
それは親しき友人のことだろうか、或いは流行病に苦しむたった一人の家族のことだろうか。
目からは痛みとは別の涙が流れていた。
「……ふふはは……フッフハハハハハ!!!」
そして、青年を殺しながらもそこで
彼は右手に残る
——スッ
その管が落下した直後、彼は一瞬にて一番近くにいた老人の目の前へ立ち塞がった。
遅効性の風が老人の服を強くたなびかせる。反射すら出来なかった頭は彼に掴まれ
「あっ——」ガッ
「シャァ!!!」グチャ!
有無を言わさずに握り潰される。脳みそが酷く散乱し服と陳列されてある装飾品と黄土色の壁面に素晴らしいデコレーションを
「ヒッ!」
老人の後ろにいた短髪の少女は
「へへっ!!」ダッ
が、これまた風を切るように距離を詰めるとその小さな体の背中から心臓部分に手をねじ込んだ。
——ザクッ
「...ゴホッ!」グチュ
少女の口から赤黒い血が垂れ流される。
貫通した手の先には未だペースメーカーにより脈を打つ心臓が握られていた。彼はそれをその場で握りつぶし手を引き抜く。
「...」バタン!
彼女は何も言わずに死ぬ。死んでしまった。
「アリアト‼︎」
少女が倒れると同時、どこからか大きく野太い声が聞こえた。そして壮年の男が動けない民衆を掻き分け出て来る。
「っっキリングニードル!」
男は力なく倒れる彼女を見て即座に彼に片手を向け、力強くそう言い放った。
目には若干の涙を浮かべものすごい剣幕で彼を睨んでいる。
そうして男の手の周りに四つの白い円が現れ回転し始める。回転が速くなり軌跡が球へと至った時、そこから銀色の何かが猛烈な勢いで飛び出した。
——グズッ
「グァァ!」
彼はそれを振り向き様に頭に食らい大きく仰け反る。発射されたものは大きく鋭い針状をしていた故に頭の奥深くまで突き刺さった。
あともう僅かのところで向こう側が見えてしまいそうな程に。確実に致命傷だ。致命傷な
「…………だははっ……はははははっ」グチュチュ
だがその直後、体勢を立て直す。そしてあろうことか笑いながら頭にある物を両手で掴み無理矢理に引き抜いた。針はジュワッと蒸発して消える。
「ぅぅっぅぅ」ボト...ボト...
額にぽっかりと空いた穴から脳みそが
「あぁぁ…」ジュジュ
けれど驚くべきことに続々と肉が増殖して傷を癒していく。終いには何事もなかったように塞がってしまった。
「はぁぁぁぁ、、、フフハハ!感謝をしたまえ.....この
「バ、バケモノ!」
——スゥゥハァァ
彼は白い煙を吐く。そしてそこでようやく周囲の人間も状況を飲み込めてきた。
子供は叫びを上げながら散り散りに逃げる。
大人は津坂に手を向けそれぞれ何かを言い放つ。
「
「
「
すると地面から砂で出来た円柱が伸びて彼を捕まえる。さらに緑がかった風の刃やそれに加えて青く光る球が殺人鬼へと放たれる。
「グルルルアアアアアァァァ!」ダッ
彼は咆哮を上げて拘束を解き、地面を蹴り上げて宙に飛んだ。その高さは町の様子が一望できるほど。
そうして唱えていた者の一人を上から踏み潰した。お次に地面に散らばった骨を拾い上げもう一人へと投げて脳天を貫く。
最後の一人はそれを見て立つことをできず座り込んでしまった。だが目から出た液体が落ちる前にはもう頭自体がもぎ取られている。
鮮血に染まった手は数多の人々に本能的な恐怖を抱かせ戦う選択肢を
彼らの目は受け入れ難い死を目の当たりにして揺れ動いている。
それからというものは、
ソレは1カンマたりとも静止することはなく、
誰もソレを目視できず、逃走は到底出来ない。
ある時は上半身と下半身をなき別れに。
ある時は体を左と右に。
ある時はただただ殴って息の根を止める。
ある時は喉を噛みちぎる。
ある時はツノを引っこ抜き脳までも。
通りを逃げ惑う民衆よりも早く走り、動き回って通った跡には必ず赤い何かしらが転がっている。家は破壊し尽くされ隠れ場はなく生存の余地もなし。
その姿はまるでカマイタチ。
風と共に命を刈り取る死神。
そして彼の魔の手は通りを抜けた先で行われていたオープンマーケット、ほとんど商店がない住宅地にさえ広がる。
そうして町は一瞬で
◆
「はぁ!はぁ!はぁ!」
そうして切って回って殺して回るに最後には彼の眼前にはひとっこ一人とも残っていなかった。
町はむせ返るほどの血の匂いでいっぱいだった。
家々の外壁には誰かの肉がこびりついていた。
道にあるものはただのもの言わぬ屍であった。
「フゥゥゥ!!」
達成感だ。その時あったのは達成感と喜びだけであった。
だが、時間が経つ毎に彼の口角は下がっていった。
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