【完結】隣人の清楚系美少女をナンパから助けたところ仲良くなった件

柊なのは

第1話 不思議な関係の始まり

 高校1年生の10月。この日は、雨が降っていた。止みそうにない雨に俺、萩原昴はぎわらすばるは、憂鬱な気分になる。


 早く家に帰ろうと思い、歩くスピードを上げると目の前で白鷺しらさきひよりが大学生らしき男にナンパされているところを見かけた。


「あれ、白鷺だよな……」


 すらっとしたスタイルにサラサラの綺麗なブロンドの長い髪。自分が通う学校の制服を着ていたので後ろ姿を見てすぐにわかった。


「ちょっとだけでいいから付き合ってくれない?」


「ごめんなさい、急いでるんで」


「いやいや、ちょっとだけだからさ」


 どうやらかなりしつこい男に絡まれているようで、白鷺は困っていた。


 あの大学生、いかつくて怖いが、白鷺が困っているのを放っては置けない。


 助けに行くことを決め、白鳥の元へ行くと俺は彼女の手を優しく握った。


「ごめん、白鷺。待たせたよな、早く行こう」


 白鷺と待ち合わせなんてしていない。だが、彼女のなら俺に合わせてくれるだろうと思いこう言った。


「! 萩原さん……お、遅いですよ。すみません、彼氏が来たので」


 白鷺がニコッと微笑むとナンパ男は彼氏がいるのかよと興味がなくなったのかナンパすることを諦めどこかへ行ってしまった。


 良かった。突然だったが、白鷺が俺に合わせてくれたおかげでなんとかナンパ男を追い払うことができた。


 ホッとしていると白鷺は握られた手を離し、傘を差したまま頭を下げた。


「助けていただきありがとうございます」


 落ち着いた声でお礼を言う彼女。私は大丈夫と俺に心配をかけないように振る舞っているが、握ったとき、彼女の手は震えていた。 


 怖かったのだろう。怖そうなしつこい男に絡まれたのだから怖くて当然だ。


「大丈夫か?」


「大丈夫です。では」


 彼女は背を向け、歩いていく。1人で帰らせるのは心配だなと思いながら俺も家へと足を向ける。


 前を歩く彼女と少し距離を保ちながら歩き、そして白鷺は先にマンションへ入っていく。


 何だかストーカーしているように見えるかもしれないが、俺と白鷺は同じマンションだ。そして、まさかのお隣さん。


 お隣さんだからといって、特別な関係ではない。俺と白鷺はただの同級生だ。





***




 翌朝、学校へ登校しようと玄関のドアを開けると家の前で白鷺が立っていた。


「うおっ、ビックリした……」


「おはようございます萩原さん。これ、昨日助けてもらったお礼です」


 両手で彼女は何かが入った紙袋を俺へ手渡した。何が入っているかわからないが、彼女は受け取って欲しそうな顔をするので俺はそれを受け取った。


「中には何が?」


「お弁当です。アレルギーがなければ残さず食べてください。コンビニ弁当ばかりでは体に悪いですよ」


「お弁当……えっ、なんで俺が……っていないし」


 紙袋の中には本当にお弁当が入っており、顔を上げると目の前にはもう白鷺はおらず先にエレベーターでおりたようだ。


 女子の作ったお弁当。お昼はいつもどこかで買って食べるし、今日はこれをいただこう。


 しかし、なぜ白鷺は、俺が毎日、昼食にコンビニ弁当と家から作ってきていないことを知っているのだろうか。




 昼休み。高校でできた友人の宮本優太みやもとゆうた田野紬たのつむぎと教室で昼食を食べようとしていた。


 ちなみに優太と紬は、中学から付き合っている。


 いつもはコンビニ弁当か学食で食べるが、今日は白鷺からもらったお弁当だ。


 少しワクワクした気持ちでお弁当箱の蓋を開けた。


(可愛いお弁当なんだが、これは……)


 卵焼きにタコさんウインナー、プチトマトなどおかずはいいのだが、ご飯の上に乗っている海苔の形が気になる。


「わっ、可愛いお弁当だね」

「ほんとだ、お弁当なんて珍しいな。てか、なんで、海苔がハートなんだ?」


 紬と優太は、お弁当箱を覗き込んできた。海苔がなぜハートなのかは俺も聞きたい。


 ハートの海苔が気になるが、白鷺の作ってくれたお弁当は美味しそうだ。


「いただきます」




 白鷺の作ってくれたお弁当はとても美味しかった。お弁当箱を洗った後、返す時にでも感想を言おう。


 家に帰ってからすぐお弁当箱を洗い、返せる状態にしてから夕方頃、俺は、お弁当箱と作ったクッキーを持ってお隣に住む白鷺さんの家のインターフォンを押した。


 すると、少ししてからドアが開いて白鷺が家から出てきた。


「萩原さん……こんばんは」


「こんばんは。お弁当、凄く美味しかった」


 洗ったお弁当箱を渡すと彼女は、嬉しそうに微笑んだ。


 クラスが違うので見たことがなかったが、噂通り、白鷺の笑顔は天使だな。


「お弁当のお礼のクッキーだ。嫌いなら受け取らなくてもいい」


 クッキーが3枚入ったものを彼女の前に差し出すと白鷺は、手を伸ばし、受け取った。


「ありがとうございます。もしかして、手作りですか?」


「うん、手作りだよ」


「手作り、凄いですね、萩原さんは。クッキー、ありがとうございます。では、また」


 ドアが閉まり、俺も自分の家に帰る。


 白鷺とはただの同級生。そして、ただの隣人。もう関わることはないだろう、そう思っていた。




***




 翌朝、昨日と同じで白鷺さんは、また俺の家の前に立っていた。


 お弁当箱は洗って返した。お弁当のお返しはした。もしかして、お弁当のお礼がクッキーじゃ足りなかったのだろうか。


「おはようございます、萩原さん。今日はいい天気ですね」


「お、おう……そうだな」


 えっと、白鷺は、俺と天気の話をするためにここで待っていたということか?


 なぜ彼女が俺の家の前で待っていたかの理由を考えていると白鷺は、また昨日と同じように俺に紙袋を渡してきた。


「今日のお弁当です」


「今日の……って、俺、白鷺に何もしてないけど」


「クッキーをくれました。ですので、そのお礼です。いらないのであればそのまま処分してもらっても構いません」


 白鷺は、ふんわりと微笑み、俺は、紙袋の中を見た。彼女の言う通りまたお弁当が入っている。


「白鷺……って、またいない」




 昼休み。白鷺の作ったお弁当箱の蓋を開けて確認するとまた昨日と似た感じだった。とても美味しそうなんだが……。


「あっ、また可愛いお弁当。にんじんハートじゃん。かっわい~」

「また海苔がハートだな。昴は、恋でもしてんの?」


 昨日と同じように紬と優太はお弁当箱を覗き込んできた。


 2日連続。お弁当にあるこのハートの形をした海苔。これは白鷺が好きでやっていることなのか、それとも何かのメッセージなのか。


(どっちだ?)






            

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