みんなどうやってささくれを処理してるの?

眞壁 暁大

第1話

王道はやはり絆創膏だろうか。

あるいは軟膏か。


言ってもせんない話である。

何といっても締め切りを一つ勘違いしていた。

明日まで大丈夫だと思いこんでいた。

こうしたミスがよくある。

よくあることだ。泣いてないぞ。

泣くほどのことじゃない。


さておき。

ささくれについてである。


A氏「絆創膏だな」

B氏「キズ○ワワ吹いておく」

C氏「アルコール消毒して放置」

D氏「ささくれを引きちぎる」

E氏「セロテープ」

F氏「養生テープ」

G氏「ダクトテープ」


このような具合。

それぞれ複数人居る代表的な意見のみを抽出してみた。

意外と多かったのがセロテープである。

手近にあるからとりあえず使う、という感じの模様。

似たようなもので「マスキングテープ」という意見もあった。これは一名。


予想外だったのは養生テープとダクトテープで、これが複数人集まるというのは不思議な感じがする。

後からちゃんとした処置をすることを想定してのとりあえず、というふうに理解しても、養生テープはまだ分かるにしても、ダクトテープ? という疑問は湧く。

怖かったのでちゃんとつくのかどうかは聞いてない。

ダクトテープは分厚くて指のささくれに巻くには不都合ではないか、という疑問も湧いたが、怖いので聞いてない。


 思ったよりも多くの人がささくれを適当に処置していることがわかった。

 それに、ささくれの皮の厚さによっても処置を切り替えているらしいことも。


ささくれの皮が薄いうちは放置して済ます、あるいは引きちぎるという意見が多かった。このときに印象的だったのが

「ひきちぎって血がにじむ/にじまない」

の境界の見極めがけっこう難しいことがあるということで、この部分で引きちぎる派の中でも意見が割れたことである。

日焼け跡の皮のように薄いときには皆、躊躇なく引きちぎるようだが、みかんの白いところくらいの厚さになると意見が別れた。

「そこまで分厚かったら引きちぎらない、血が出る」という一派と

「まずは引っ張って試す、痛かったら血が出るだろうから止める」派

「知らねえ、関係ねえ。引っ張ってちぎる」強硬派

大きく3つに分かれていた。


引きちぎる派の中でメジャーなのは「試してみる」派でこれは自身のいくつも重ねてきた越冬期の経験から、ちぎる/ちぎらないの見当をつけられることに、こころなしか自信をのぞかせていた。

ちぎらずに諦める一派は軟弱であり、構わずちぎる一派は野蛮であると見做しているような雰囲気。

同一の思想のもとにあるように見えながら、その内部では穏やかならぬ暗闘があるように見えたので深掘りはしない。


 ちなみに私の対処法は

「ささくれにホットミルク作るときにできる皮をのせる」

 です。

 子供の頃大嫌いでした。あんなに不味い飲み物があるとは思ってもいなかった。

 いまでも嫌いですが、子供の頃は嫌いすぎて、おやつに出されるホットミルクを前にウジウジして、冷めていくうちに表面に張っていく膜をいじっていたのを覚えています。


(どうでもいいですが、子供が食事で遊ぶときは

「オレはこの食べ物が嫌いである」

 という意思表示の場合があります。親御さんはひっぱたかずに気づいてあげようね)


 そうやって手遊びして指についた膜、指先とかについていると乾くと違和感がたまらないのですが、ささくれの出来る爪の根元などに付着しているときにはほとんど気にならなかった。風呂に入るときになんか指先が染みるな、となってささくれについていたのを思い出すくらい。

 そうした経緯もあって、冬になってささくれが出来るとむかし手遊びしていたことを思い出す。


 そして、いまでも大嫌いだけど、自分以外の人に作るのには苦にならないホットミルクの膜ができるたびに、スプーンで掬って自分の指にまとわりつかせていたりするのです。


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