化けて出ずともいるだけで
過言
結論はここにはない
君は、幽霊が怖い理由ってなんだと思う?
というか、「恐怖」ってそもそも、何なのかな?
うん。そうだね。色々種類はあるけど、元を辿れば全部、「死にたくない」ってことだと思うんだ。
じゃあ幽霊を怖がるのもそうなのかな?
死にたくないのかな?
確かに殺そうとしてくる幽霊もいるけどね。祓ってくれって頼まれるのは大抵そういうヤツだ。俗な言い方をすると悪霊。
でも、そういう事じゃないと思うんだ。
そこそこ長い話になると思うけど、聞いてくれるかい?
うん。ありがとう。
僕はこんな仕事をしているけどね。未だに幽霊ってものがどうしようもなく怖い。
どれだけ殺意のある幽霊にだって殺されないっていう自信はある。というかむしろ、祓ってるわけだからどっちかというと僕の方だよね、殺してるのは。
ああうん。成仏させるとかじゃなくて、祓ってるの。
成仏してるのかもしれないけど、わからないからね。死後の世界は僕、信じてないから。だって幽霊は見えるけどさ、死後の世界って確認しようがないじゃない。
だから、『こういう手順を踏めば幽霊はこの世から消えてなくなる』っていう手順を確立して、祓って欲しい、つまり『消えて欲しい』って依頼が来たらその手順をそのままなぞる、っていうことをするわけ。
どういうことをするのかって……企業秘密だよそりゃあ。君の会社は商品の製法を客に公表するのかい?
話が逸れたね。
それでね、僕は、自分だって明確な殺意と凶器を持っているのに、幽霊と対峙するとどうしても、体の芯から震え上がってしまえる。
どれだけ仕事を続けても、いつまでも、怖い。
どうしてなのか、どれだけ考えても結論が出なくてさ。一回、聞いてみた事があるんだよ。
幽霊に。
あれは答えだったのかな、わからないんだけど。
「わたしがいちばんこわい」
って。
そいつ、完全に悪霊で、しかももう何人か殺してるタチの悪い奴だったんだよね。
霊の殺人に関しては、野生動物の被害みたいなもんだと僕は思ってるんだけど。
まあでも、もとは人間なんだから。言ってしまえば連続殺人犯なわけだよ。
なかなかの凶悪犯ってこと。
それでも、そいつ、ずっと、眼をかっぴらいてて、手で顔覆ってて。顔は青ざめてて……あ、これは死んでるんだから当然か。
そうそう。心の底から怖がってるって感じの表情だったってこと。
しかもその顔のまま襲い掛かってくるんだからおっそろしいよねえ。
で、まあパッと祓って。
もう怖くて怖くて。でもやっぱり、気になるじゃん。
それ以降、対峙する幽霊には毎回、このこと聞いてるんだけどさあ。
君は、幽霊が怖い理由ってなんだと思う?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます