はあとぶれいく

ムラサキハルカ

赤ずきん

 一人で遠出なんかするものではなかった。目を覚ましてすぐ、孝子こうこは後悔した。

 学校帰り、ふと思い立って、趣味のパンキッシュな服を買おうと、住んでいる街から何駅も離れた店に向かった。本来であれば地元のデパートにでも行けば良かったのだが、同じ高校の連中に見られるかもしれないのが耐えがたかったのもあって、敢えて遠出した上で、知る人ぞ知る小さなところを選んだ。そうしてお目当ての品を見つけて意気揚々としていたら、背後から羽交い絞めにされてすぐ、意識が途切れ……。

 気が付けば、ガラスでできた棺のようなものに体を囚われていた。

 眼前にはこちらを興味深そうに見下ろす年齢不詳の男がいる。思わず、拳でガラスを叩くがびくともせず、手が痛くなるだけだった。心はどこまでもささくれだっていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る