隣のVtuberが騒がしい件
一之瀬
プロローグ
僕が中学3年生の頃から推しているVtuberだ。
去年の4月にデビューしたばかりだが、もう登録者数は90万人近くになっている。聴き手を魅了する歌声と、楽しいトークで、瞬く間に人気者になった。
そんな雨音の1周年記念ライブが今夜行われる。パソコンの前で、ライブ開始の時間を今か今かと待っていた。
そのとき、隣の部屋から声が聞こえてきた。
「こん……は~! ……配信……よ~! み……よろ……ね!」
引っ越してきて数日経つが、隣の部屋に誰が住んでいるのかは、まだ知らない。
でも、女の子の声だな。しかも結構大きな声だ。
その声は、少し途切れ途切れに聞こえてくる。壁を通して漏れ聞こえてくるせいで集中が乱れそうになるが、雨音のライブに気持ちを戻そうとする。
しかし、隣の部屋からの声は止む気配がない。
「……って! ……聞こえ……うし……!」
声のボリュームが、少しずつ大きくなっているようだ。
思わず立ち上がり、部屋を出て隣の部屋の玄関に向かう。インターフォンを押し、中の人が出てくるのを待つ。
「すみません、ちょっと声が大きいんですけど……」
ドアが開き、金髪の女の子が顔を出した。部屋着とはいえ、薄手のタンクトップ姿で現れた彼女に、思わず目をそらしてしまう。
「あっ、ごめんなさい! 私、初めての……えっと、初めての挑戦でつい興奮しちゃって。これからは気をつけます!」
にこやかに答える彼女を見て、僕は思わず口を開いた。
「初めての挑戦?」
「あ、その話はまたの機会に。じゃあ、おやすみなさい!」
そう言って、彼女はさっとドアを閉めてしまった。
少し気になったが、雨音のライブに集中するため、僕は自分の部屋に戻った。
ライブが終わり、就寝の時間が近づいてきた。
隣の部屋からの声は、もうしなくなっていた。
僕は、ベッドに横たわりながら考える。
あの子は、何かに挑戦しているのか。
初めてだから、うまくいかなくて悔しい思いをしているのかもしれない。
そんなことを思いながら、僕は静かに目を閉じた。
明日からは、新しい高校生活が始まる。
どんな出会いが待っているのだろうか。
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