ささくれやがった青春

羽弦トリス

ささくれやがった青春

オレの名は、米異よねいタメル。県立高校普通科の3年生だ。

何の取り柄のない男で、成績は中の下の上。

だが、彼女だけはいっちょ前にいる。

付き合って1年。 

夏休みに1回、キスをした。それから、登下校は手を繋いでいた。 


朝補習の時間が始まる前に、

「ヨネイ〜!稲中持ってきたかぁ〜」


ドゴッ


「アバババッ!……殴る事無いじゃん」


このバカ女を、裏拳で成敗した。


「黙れ!この便所コウロギ!お前に貸した3巻まだ返って来ねぇじゃねぇか!」

「まだ、読んでるの。この事、副担任の広瀬先生にチクってやる!……オヨヨ」


「なぁ〜に、補習が始まってるのに、ほざいてやがるっ!和田っ」

和田は、周りが椅子に座っているのに、1人立っていた。


バシッ!


アホッ!


和田は広瀬先生のビンタを喰らった。

朝の英語の補習が始まった。


休み時間。

「ヨネイ君、あんまり和田さん殴らないでよ!かわいそう」

と、オレの彼女のいずみが言った。

オレはちょっとムカついて、

「あれは、和田が悪いんだ。だから、成敗した」

「この前、鼻血流してたじゃん」

「オレの心はささくれ立ってるのさ」

「何それ?」

「……ま、ジュニアが……」

「この変態っ!」

「怒るなよ」


オレらは、3月には卒業する。みんな進路が決まっている。

オレは関東の大学に合格して、いずみは県内の看護学校に決まっていた。

和田なんか、K大の医学部だ。だが、看護学科。

楽しい時間はあっと言う間に過ぎて行く。


今日でクラスのみんなとお別れだ。

写真を撮りまくった。最後の下校もいずみと手を繋いで帰った。


「いてっ」

「どうしたの?ヨネイ君」

「人差し指がささくれた。剥くと血が出るよね?」

「ビタミンが足りてないんじゃないの?」

「そうかもな」


オレらは、バスで帰宅した。

大学1年の夏休みに、オレは浮気して、いずみも男を作った。

それで、関係は途切れた。

あの頃は、みんなささくれ立っていた。

それをオッサンになってから気付くバカ男がオレなんだ。

それを皆経験する。


終劇

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ささくれやがった青春 羽弦トリス @September-0919

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ