少し前の自分だと思ったあいつ

「うるせーな!! わかってるよ!」


 そう大きい声が聴こえて、めちゃくちゃに扉を閉めた弟。


 スマホに兄から連絡が入った。弟は携帯ゲーム機を持つと、連絡で届いたパスワードを打ち込む。


 ロードが終わると、ゲーム画面には、一人のキャラクターが待機していた。


 三十分の協力プレイを終えたあと、兄は弟に聞く。

 怒らず、馬鹿にせず、ただ々聞いた。少し共感を示して。


 さっきとは違い、人が変わったように大人しく扉の開閉する音。

 兄の部屋に、ノックがした。


「兄ちゃんもケーキ食べる?」

「お前にイチゴやろうか?」

「いらねーよ」


 いつの間にか向かい合って食べるようになっていた二人、並んでケーキを食べる様子に、母親は内緒で笑った。


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