天命

Grisly

天命

狭い部屋。

剣玉を1人で練習している少年がいた。


すると、5人の天使達が現れ、こう告げる。


「あなたのやっている事は、

 いずれ世界を救う

 偉大な事業となるでしょう。

 続けなさい。」




住宅街の道路。

缶蹴りをしている少年たちがいた。


また先程の天使達が現れ、こう告げた。


「あなた方のやっている事は、

 いずれ世界を救う

 偉大な事業となるでしょう。

 続けなさい。」




道端で売れない絵を売っている

ストリートアーティスト。


また先程の天使達が現れ…








天界から、これを見ていた俺は、

神に問いかけた。


「貴方のお心が深いのは理解できましたが、

 今日貴方が支援なさったのは、

 その全てが

 とても偉大な天命とは程遠い

 くだらない物だ。

 

 手当たり次第に人々を駆り立てるのは、

 いかがな物ですか。


 こんな事に数万人の天使が日夜を問わず

 動員されているのですか。」


俺は天使見習い。

これからする仕事の研修といったところだ。





すると、神は答えた。



「いいかね。

 いかなる偉大な事業も、

 最初は、このようなほんの小さな、

 些細でくだらない事から

 支援せねばならん。


 そして、そうしてできた

 いかなる偉大な事業も、

 見る人が見たら、

 くだらない事に過ぎんのだ。

 万人に共通の天命などない。



 最後に、これが1番大事な事だが、

 100人を支援しても、

 神の声が聞こえるのはごくわずか。

 そして、

 その支援通りに事を運ぶとなると、

 さらに…


 だからこそ大量の天使を

 動員する事になっている。

 君を含めて。


 人への支援とはこのような物だ。」


 

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天命 Grisly @grisly

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