KAC20243箱
綾野祐介
KAC20243箱
「カリカリカリ」
痛い。もう爪が剥がれて来ている。真っ暗で何も見えないが、そこは棺桶としか言いようのない箱の中だっだ。
「なんでこうなった?」
ここが何処なのか全くわからない。箱の内側を叩けるほどのスペースも無いので引掻くしかなかったのだが、それも全く無駄だった。
ポケットにスマホがあったがバッテリーがもう残っていないので要点を効率よく伝えて助けを呼ばないといけないが、まずここが何処なのかが判らない。
GPSで探すことが出来る知り合いのエリカに電話をして見つけてもらうことにした。なんとか掛けることに成功し要点を伝えるが信用してもらえない。
「何の冗談?ちょっとアタシ今、忙しいんだけど」
エリカは彼女ではないが親しい異性の友達だ。
「信じて欲しい、本当に棺桶みたいなところに閉じ込められているんだよ。とりあえずGPSで探してみてくれないか」
「判ったわよ。でもドッキリだったりしたら絶交だからね」
「それでいいから、頼む」
一旦電話を切って少し待っているとエリカから掛かって来た。
「隆志、あんた何でそんなところに居るの?そこで何してるのよ」
「えっ、ちょっと待ってくれ、俺今どこに居るんだ?」
「GPSは市の火葬場になってるわ」
「火葬場って、あの火葬場か?」
「他にどの火葬場があるって言うのよ」
「ごめん、混乱してて。悪いけど火葬場まで来てくれないか」
「なんでよ、深雪に行ってもらえばいいじゃない」
「深雪は今日は居ないんだよ」
「ええ、ダルいな。仕方ないから行ってあげるけどなんか高いブランド物でも買ってよね」
「判ったから急ぎで頼むよ」
これでエリカが見つけてくれれば助かる。
俺が周到に用意した無縁仏との遺体すり替えをそのまま逆に使われてしまったというのか。でも確かに死んでいるのを確認したはずだ。
深雪は『いつまでも一緒よ』というのが口癖の愛情が重い女だった。
足音が聞こえ箱の外から声が聞こえてきた。
「これでいつまでも一緒よ」
KAC20243箱 綾野祐介 @yusuke_ayano
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