しまかぜ荘の毎日

emakaw

しまかぜ荘のフシギ ことのはじまり編

 えーと、こんにちは!私、光村みつむらあずみと申します。あ、ひらがなで「あずみ」ね。

 いきなりで、ごめん。でも、ここは紹介しておかないと、何が何だかわかんなくなっちゃうの。

 さて、私は「しまかぜ荘」っていうちょっと年季の入ったアパートに住んでるの。しまかぜ荘のみんなは、いい意味でも悪い意味でもすっごく仲が良くって、知らない人はいないわ。ここで、しまかぜ荘のみんなを紹介するわね。

 まず、私、光村あずみは、本が大好き。……かといって、そこまで頭はよくない。特に推理小説を読むんだけど、ある一人の作家さんの本に偏りすぎてるから、あんまり多くは知らない。で、やっぱり推理小説の謎解きも分からない。

 次に、同級生の石原瑞希いしはらみずき。女みたいな名前だけど、男。本人は、「おしゃれな名前でしょ」とかいって、気に入ってるみたいだ。瑞希は、名前の通りに育ったのか、あんまり男っぽい性格ではない(あれ、もしかしたら私のほうが男っぽいのかな……?)。外で遊んだりしないし、かといってゲームに熱中したりもしない。ま、まあ、読んでもらったらわかると思う!

 ……「みんな」とは言ったものの、やっぱり面倒くさくなっちゃったから、今の状況を説明しながら紹介することにしておくね。


「う、うえ~っ!」

 確か、夏海ちゃんがそう言ったのは、午後3時くらいだったんじゃないかな。

 夏海ちゃんは、ここ、しまかぜ荘の住人。その時は、夏海ちゃんの誕生日パーティーをしていたところだった。

 私や瑞希、ほかのしまかぜ荘の住人は、夏海ちゃんに招待されてやって来た。

「え、な、夏海ちゃん?ご、ごめん……」

 今のは、夏海ちゃんの友達の和貴かずきくん。しまかぜ荘には住んでなくて、夏海ちゃんが学校で誘ったそうだ。

 和貴くんは、夏海ちゃんにプレゼントで虫をあげていた。私、虫は苦手だから見なかったんだけど、瑞希によるとクワガタだったんだって。どうでもいいや。


 さて……。ここで気になるのは、なんでクワガタをプレゼントしたのかってこと。

 だって、どんなに女心がわかってない子でも、さすがに虫をプレゼントしようとは思わないよね。

 でも、さっきのリアクションからして、夏海ちゃんがクワガタを欲しがっていたとはとても思えない。


 ここで、現在いまに戻る。

「ねえ瑞希ぃ~。なんで、和貴くんは夏海ちゃんにクワガタなんかあげたんだろう」

「えっ?まだわからないの?」

「……わからないけど……。その様子からすると、瑞希はもうわかってんの?」

「もちろん」


 あー、ここで読者のみなさんに言っておくけど、まだ証拠は出そろってないからね。っていうか、ここに書いてないから。あくまでも、全部そろってるのは私たちの世界線の中での話だから。


「教えてよ教えてよお」

「ええ~。……明日、学校に行けばわかるよ」

 学校……?学校に行けば、何がわかるんだろう。


 その日の夜は、眠ることができなかった。

 ――と、書きたい雰囲気だけど、おいしいケーキや温かいお風呂のおかげで、ぐっすり眠ることができた。

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